【第34回(2020年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問171-173応用力試験「妊娠高血圧症候群の栄養管理」

次の文を読み「171」、「172」、「173」に答えよ。

K産科クリニックに勤務する管理栄養士である。医師の指示のもと、妊婦の栄養カウンセリングを行うことになった。妊婦Aさんは、36歳、事務職(身体活動レベル1.50)。妊娠8週目、経産婦。妊娠高血圧症候群の既往はあるが、現在は高血圧ではない。身長155 cm、標準体重53 kg、現体重63 kg(妊娠前60 kg)、BMI26.2 kg/m2 (妊娠前25.0 kg/m2)、血圧120/72 mmHg。

34-171 エネルギー指示量として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

(1)1,400 kcal/日
(2)1,800 kcal/日
(3)2,200 kcal/日
(4)2,600 kcal/日

正解:2

【解説】

1・3・4=×
2=○:成人の推定エネルギー必要量は、推定エネルギー必要量=基礎代謝基準値(kcal/kg 体重/日)×参照体重(kg)×身体活動レベルにより算出されます。

小児・乳児や妊婦・授乳婦では、成人の推定エネルギー必要量に、成長や妊娠継続、授乳に必要なエネルギー量を付加量として加えることで算出されます。

妊婦Aさんは36歳、標準体重(参照体重)は53kg、身体活動レベル1.50であり、『日本人の食事摂取基準2020年版』によれば36歳での基礎代謝基準値は21.7kcal/kg 体重/日です。

したがって、妊娠前の推定エネルギー必要量=成人の推定エネルギー必要量は、21.7kcal/kg 体重/日×53kg/1.5=1,725 kcal/日です。

また、Aさんは妊娠8週と妊娠初期であるため、50 kcal/日が付加量となります。

そのため、妊婦であるAさんの推定エネルギー必要量は1,725+50 kcal=1,775となります。

したがって、一番近い値は選択肢(2)1,800となります。

『日本人の食事摂取基準2020年版』の基礎代謝基準値と妊婦の付加量を知っているかを問う問題ですね。

34-172 妊娠20週になって、現体重66 kg、BMI27.5 kg/m2、血圧145/90 mmHg、ヘモグロビン12.0 g/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、尿素窒素18 mg/dL、尿蛋白(-)となり、栄養食事指導の依頼があった。降圧薬が処方されている。
たんぱく質と食塩の指示量として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

(1)たんぱく質55 g/日、食塩7g/日
(2)たんぱく質55 g/日、食塩3g/日
(3)たんぱく質85 g/日、食塩7g/日
(4)たんぱく質85 g/日、食塩3g/日

正解:1

【解説】

妊娠中期となったAさんを見ると、まずは血圧が収縮期(140mmHg)も拡張期(90mmHg)も基準を超えていますので、妊娠高血圧であることがわかります。
クレアチニン0.8 mg/dLとやや高めですが、尿素窒素18 mg/dLは基準値内であり、尿たんぱくも出てないので、腎機能はやや低下くらいでしょうか。

ヘモグロビンも12.0 g/dLなので、貧血というほどでもないということが伺えます。

したがって、本問は、妊娠高血圧症候群に対する食塩とたんぱく質量についての知識があれば解答できます。

通常、高血圧での食塩量は6 g/日未満に制限します。

日本産科婦人科学会『妊娠高血圧症候群の診療指針2015年』では、妊娠高血圧症候群はすでに循環血液量が減少しているため、過剰な減塩にはあまり効果がないということから、食塩の摂取量を7~8 g/日に制限するとしています。

また、同指針では、妊娠高血圧症候群でのたんぱく質量を理想体重kg×1.0g/日としています。

Aさんの理想体重=標準体重は53kgですので、Aさんのたんぱく質摂取量は53×1.0g/日=53g/日です。

なお、妊娠高血圧症候群の栄養管理についての知識がなくても、成人男性の1日たんぱく質摂取量は60g/日くらいですし、食塩量も大体6~7g/日くらいです。

これらから外れる値はよっぽどの事例ですので、これらの数値を目安に考えれば、大きく正解を外すことはないと思います。

1=○:上記より、最も適切な選択肢です。

2=×:食塩3g/日は過少のため、誤った選択肢です。

3=×:たんぱく質85 g/日は過剰のため、誤った選択肢です。

4=×:たんぱく質85 g/日は過剰であり、食塩3g/日は過少のため、誤った選択肢です。

34-173 妊娠39週で出産。出産直前の体重は70 kg。 産後8週目、現体重66 kg、BMI27.5 kg/m2、血圧124/82 mmHg。 再度、栄養食事指導を行うことになり、1日の食事内容を聞き取った(表)。ふだんも同じような食事をしているという。この結果を踏まえた行動目標である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。

(1)野菜の摂取量を増やす。
(2)果物を摂るようにする。
(3)糖質の多い食べ物を減らす。
(4)油脂の多い食べ物の品数を減らす。

正解:4

【解説】

Aさんの妊娠前の体重60kgから出産直前で70kgと10kg増加しているのは許容範囲ですが、BMIが27.5と高いため、エネルギーが過剰摂取であると判断できます。

糖質と脂質のどちらかを減らす必要がありますが、バタートースト、カルボナーラ、ドーナツ、豚カツと脂質が多い食事が目立ちます。

1gあたりのエネルギー量は糖質で4kcal、脂質で9kcalですから、量も単価も高い脂質を制限することが目標として妥当です。

1=×:野菜の摂取量を増やしても体重減にはすぐにつながらないため、最も適切な選択肢ではありません。

2=×:果物=果糖(フルクトース)を摂ることは体重減に反するため、最も適切な選択肢ではありません。

3=×:体重を減らすためには、糖質の多い食べ物を減らすことは脂質を減らすことよりも優先順位が低いため、最も適切な選択肢ではありません。

4=○:体重を減らすためには、g当たりの産生エネルギー量が多い油脂の多い食べ物の品数を減らすことが最も妥当ですので、最適な選択肢です。


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