介護福祉士国試過去問10年分を解析!必ず覚えたい認知症の治療・ケアのまとめ

高齢化社会において、認知症は発生頻度が高く、医療・介護にかかわる者にとって必須の基礎知識です。

認知症の知識について、2017年に実施された第30回介護福祉士の国家試験から、過去10年分の出題内容をまとめました。
出題箇所に該当する文章には、例えば“第30回介護福祉士国家試験の問77”からの出題には、『(30介77)』のように表記しています。

また、ケアの前提となる疾患の理解のために、発生頻度やそもそもの発生メカニズムなどについてもまとめているので、看護師・薬剤師・ケアマネなど、チーム医療にかかわる人にとっても知識を確認できるよう解説しました。

認知症をしっかり押さえて、明日のケアにつなげていきましょう!

認知症の疫学

認知症の患者・利用者はどのくらいいるのでしょうか。

筑波大学の朝田隆先生らの研究班による2010年の全国各地を対象とした疫学調査の結果、全国での有病率は15%、2012年時点での高齢者認知症患者は462万人、2025年での推定は730万人と推定されています。

また、同研究によれば病型別の頻度は、アルツハイマー型認知症が最多の67.6%、血管性認知症が19.5%、レビー小体型認知症/認知症をともなったパーキンソン病は4.3%となっています。

(出典:朝田 隆ほか:厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業『都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応』,2013年)

認知症の種類

一口に“認知症”といっても、その種類は多彩です。

認知症といわれる疾患は、主に「1.アルツハイマー型認知症」「2.レビー小体型認知症」「3.前頭側頭型認知症」「4.脳血管性認知症」の4つのタイプに分類されています。

4つの中でも脳血管性認知症だけ、脳に直接異変が起こるのではなく、脳の血管が原因で脳に異変が起こる疾患となります。

認知症の共通症状

認知症の症状は、認知機能が障害される中核症状と、認知機能障害以外の症状=周辺症状とに大別されます。

他の疾患でも認知機能が低下するものがありますが、認知症は、基本的に不可逆で、一度知的機能が低下したら元に戻らないことが大きな特徴です。

中核症状

(25介79、25介84、24介80、23介103、22介38、20介110)
近時記憶障害:数分後の記憶が障害される。
失見当識(見当識障害):時間や場所、人がわからなくなる(26介84)。
・失語:声は出るが、物の名前が言えなくなる。
失行:バイバイなどのジェスチャーができない、使い慣れた道具をうまく使えないなど、目的に沿った行動ができなくなる。(29介78)
遂行(実行)機能障害:やろうとしたことの手順がわからなくなる(27介82)。

BPSD(周辺症状;行動・心理症状)

(27介81、25介84)
意欲や自発性の低下、無関心(アパシー):周囲への興味や感情が乏しくなる。うつに似ているが、自責感や悲哀感がないのが特徴(26介82)。
・脱抑制行動:衝動や感情を抑えられない状態。とりわけ、感情を抑えられない状態を感情失禁という(28介84、26介83)。
・徘徊:地理的な物忘れを背景に起こる。
睡眠障害:ニューロンの変性によりレム睡眠が減少すること、また、認知機能が低下して外出が減ることで日光を浴びる時間の低下やメラトニン分泌量の低下を背景に睡眠覚醒リズムが障害されることで、睡眠障害は高頻度におきる。眠りが浅くなるだけでなく、夜間に覚醒することで、夜間徘徊につながる

・物を盗られたなどの妄想・幻覚:物忘れを背景に起こる。また、レビー小体型認知症では幻視や幻覚を背景に、嫉妬妄想や何者かが同居していると訴える妄想などがみられる。

タイプ別の認知症の症状

1.アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)

(22介71)
認知症の中で最も割合を占める認知症です。

原因はいまだ不明ですが、記憶や認知機能に関係する神経伝達物質であるアセチルコリンの低下がみられるため、これが原因に関係があるのではと考えられています。

また、脳の神経細胞が変性して、脳全体が徐々に萎縮していくため、記憶にかかわる海馬なども萎縮し、記憶障害がみられます。

そのため、最も中核的な症状は記憶障害となり、個人の体験の記憶であるエピソード記憶が障害されます(30介78)。

また、アルツハイマー型認知症の最大の危険因子が加齢であることから、男性よりも平均寿命が長い女性での発症が多く見られます(25介82)。

BPSDとしては、意欲・感情の障害、ものやお金を盗られたという妄想(24介85)、幻覚・幻視、興奮、徘徊などが見られます。

2.レビー小体型認知症

脳の大脳皮質や脳幹、後頭葉などの神経細胞に、「レビー小体」というタンパク質ができることで神経細胞が壊れ、神経症状がみられます。脳の萎縮はみられないことが多いです。

パーキンソン病も、このレビー小体というタンパク質の発生が、脳幹に限られている場合はパーキンソン病となり、脳全体に広がっている場合はレビー小体型認知症となります。

レビー小体型認知症の中核症状としてよく見られるのが、認知機能の変動です。時間帯や日により、頭がはっきりしている状態と、ボーっとしている状態が入れ替わり繰り返します

また、レビー小体型認知症では、他の認知症と異なり、物忘れなどの記憶障害や人格障害などの中核症状よりも、BPSDとして、視覚をつかさどる後葉体が障害されることで、「知らない人がいる」「部屋に虫がいる」などの具体的な幻視・幻覚が多く見られます(28介81、25介81、24介82)。

そのほかのBPSDとして、以下がみられます。
・手足の震え・小刻み歩行:パーキンソン病様症状がみられ、つまずきや転倒などの運動機能障害が起こりやすい(30介80、28介81、26介79)。
・抑うつ症状:約5割の人に見られるとされる。

3.前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)(ピック病を含む)

脳において、感情・注意・思考をつかさどる前頭葉と、言語・記憶・聴覚をつかさどる側頭葉が萎縮して血流が障害されることで、行動・神経・精神の異常をで生じます。

アルツハイマー型認知症とは区別され、タウタンパクの蓄積を成因とするものを「ピック病」といい、この疾患が原型となっています。

以下のような中核症状が特徴的です。
・脱抑制行動:衝動や感情を抑えられない状態を「脱抑制」というが、前頭葉が障害されることにより、感情が抑えられない(感情失禁)、マナーや常識の欠如した発言(27介83)、暴力などがみられる。
・常同行動(30介護79):特定の行動を繰り返すこと。パチパチと手を叩くような単純なしぐさを繰り返すものから、同じコースの散歩・同じ食べ物の摂取を繰り返す習慣的なものまで幅がある。

4.血管性認知症

脳梗塞や脳出血などにより脳血管が障害されて脳細胞が壊れてしまい、脳機能が低下する疾患です。

基本的な症状は他の認知症と同様ですが、脳血管が障害された部位により症状が異なるため、『まだら認知症』とも呼ばれます。

脳梗塞の原因は動脈硬化なので、心疾患や脂質異常症、喫煙などがその成因となり、その成因から女性よりも男性に多くみられる疾患です(30介82)。

めまい(29介81):脳血管が障害される=脳に栄養と酸素がいかないことで生じます。ほかの認知症型にはない特徴です。

5.若年性認知症

(26介80)
家族の家計を支える世代が認知症患者となりますが、特化した社会的支援は少ないため、家族の心理的・経済的負担は大きいです(30介84)。症状としては、神経症状を認めることが多いです(29介82)。

認知症の診断と間違われやすい疾患

認知症の診断は、日本神経学会が定めた『認知症疾患診療ガイドライン2017』によれば、問診による病歴聴取と身体的・神経学的診察が重要で、認知症の有無や症状、重症度を包括的に把握することが求められるとされています。

せん妄やうつ病、単なる加齢など、認知症に似た疾患を除外しながら、画像検査や血液検査を行い、認知症のタイプ別の診断を行います。

画像診断

認知症の診断では、頭部CTが有効で、アルツハイマー型認知症では脳の萎縮が画像として確認できます。

評価尺度

認知症の程度を測る評価尺度には、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニ・メンタルステート試験(MMSE;Mini Mental State Examination)があります。これらはあくまで程度を測ることを目的としているので、高得点すなわち認知症だと診断がなされる訳ではないことに注意しましょう(30介81)。

①長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):精神科医の長谷川和夫先生が開発した簡易知能検査です。年齢や、今日の日付、数字の読み上げなど、記憶・見当識・計算などに関する9つの質問を30点満点で評価するもので、20点以下で認知機能低下と判断します(24介83)。

②ミニ・メンタルステート試験(MMSE):国際的に活用されている検査で、11の質問からなり、30点満点で評価するものです。23点以下で認知機能低下と評価します。口頭での回答と図形の模写などで簡便に行えます(26介81)。

③IADL(Instrumental Activities of Daily Living;手段的日常生活動作):ADLはできないと生きものとして命にかかわる基本的な動作ですが、IADLは社会生活を営むために必要な動作のことです。

具体的な評価項目としては、「電話の使用」「買い物」「食事の準備」「家事」「洗濯などの家事」「交通機関の利用」「服薬管理」「金銭管理」があります。

初期の認知症ではまずは社会的な生活に支障をきたすことから、IADLを使って評価します(30介81、29介80)。

せん妄

せん妄は、周囲の刺激に無反応だったり、ぼんやりするなどの意識障害・注意障害、興奮やつじつまの合わない行動、記憶障害や失見当識、幻覚など、認知症に類似した症状が現れます。

急性・一過性であり、突発的に現れた場合はせん妄の可能性が高いです。多くは可逆性(元に戻る)で、認知症に合併することも多いです。

日内変動を認めることが多く、一日のうちで症状が変わることも特徴です(27介79)。高熱が原因となる場合や(26介78)、向精神薬などが原因となる薬剤性のせん妄もあります(25介80、23介71)。

慢性硬膜下血腫

軽く頭を打ったときなどに、頭蓋骨の下で脳を覆っている膜=硬膜と、脳との間に血液がたまってしまい(血腫の形成)、脳が圧迫されて、認知症のような記憶障害や運動機能障害が急速に起きる脳神経疾患です(24介81)。

血腫を外科的手術により取り除くことで回復が可能です(28介82、25介83)。

正常圧水頭症

(28介80、27介80)

うつ病

健忘性障害

加齢による記憶力低下

記憶の種類

(23介41、20介44)
①即時記憶:60秒までのごく短い記憶。即時記憶が障害されると、今日の日付がわからない、どこに物を置いたか忘れるなどの症状として現れます。

②近時記憶:数分・数日後~数ヶ月の記憶。近時記憶が障害されると、さっき言ったことを忘れるなどの症状として現れます。

③遠隔記憶:認知症を発症する昔の記憶。

④エピソード記憶:記憶時間の長さから、近時記憶と遠隔記憶をまとめて『長期記憶』といいますが、長期記憶のなかでも、自分に起きた出来事や経験を特に『エピソード記憶』といいます(23介41)。

1.アルツハイマー型認知症の治療

(29介83)

薬物治療

①アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン):中核症状である記憶障害は、海馬や大脳皮質に含まれ、学習・記憶にかかわる神経伝達物質であるアセチルコリンが低下していることから発生していると考えられ、アセチルコリン補充を目的に、ドネペジル塩酸塩(アリセプト®)が処方されます。

ドネペジルはアセチルコリンそのものではなく、アセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼを阻害することで、分解されるアセチルコリンを減らし、その濃度を高めて、認知機能を改善させるものです。

『認知症疾患診療ガイドライン2017』によれば、軽症~中等度例では、まずアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の3~5mg/日の投与からはじめ、重度ではドネペジル塩酸塩を10mg/日まで増量したり、メマンチンなどを併用するなどします。

なお、ドネペジルにはパーキンソニズムを悪化させた報告もあるため、パーキンソン様症状がある患者へは慎重投与となっています。
出典:エーザイ株式会社:アリセプトのすべて>第Ⅵ章 特殊患者への投与

②NMDA阻害薬(メマンチン):グルタミン酸は脳内の興奮刺激の伝達物質です。認知症では脳に異常なタンパク質ができることで、グルタミン酸が常に生成される状態となりますが、そのグルタミン酸が伝える刺激=シグナルが過剰にでることで、記憶形成のための正常なシグナルと混ざってしまい、記憶や学習が阻害されてしまいます。

メマンチン(メマリー®)は、このグルタミン酸の過剰産生を抑えるため、グルタミン酸受容体であるNMDA受容体を阻害する働きがあります。

ドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とはメカニズムが違うので両者は併用可能で、メマンチンは中等度以上のアルツハイマー型認知症に使用されます。

③その他:上記の薬剤は中核症状に対して処方されますが、ドネペジルの副作用である嘔気(はきけ)に対してドンペリドンなどの制吐薬が、またBPSDの睡眠障害にはゾルピデム(マイスリー®)などが処方されることもあります。

ドネペジル ガランタミン リバスチグミン メマンチン
代表的な商品名 アリセプト® レミニール® イクセロン® メマリー®
外観        
作用機序 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 NMDA阻害薬
用法・用量 1日1回5mg 1日1回4mg 1日1回4.5mg 1日1回5mg
適応 アルツハイマー型
前頭側頭型 × × × ×
レビー小体型 × × ×
代表的な剤型の薬価(2018年4月) OD5mg:265.4円/錠
OD10mg:473.3円/錠
OD4mg:100.8円/錠
OD8mg:179.8円/錠
パッチ4.5mg:329.8円/枚
パッチ18mg:417.2円/枚
OD5mg:134.9円/錠
OD10mg:240.7円/錠
1ヶ月の負担額
(1日1回×30日×1割負担)
796円/月 324円/月 989円/月 404円/月

回想法

(28介77、23介48、20介47)
回想法は1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法です。

過去の懐かしい記憶や思い出を他者と話したり聞いたりすることで、脳が刺激され、記憶力や集中力が回復したり、情動が安定したりする効果を期待した方法です。

回想法で重要なのは、記憶の正確さではなく、記憶をたどる行為自体なので、間違えを訂正せず、無理に聞きださず、当事者が思い出しやすい質問をすることがコツとなります。

認知症が治るような劇的な治療法ではありませんが、認知機能の改善報告もあり、簡単にできるため、活用しやすいです。

2.レビー小体型認知症の治療

薬物治療

対症療法として、アルツハイマー型認知症と同様、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)やNMDA阻害薬(メマンチン)が処方されます。

また、レビー小体型認知症は、パーキンソン病と同様、レビー小体の出現が原因のため、そのパーキンソニズムに対して、L-dopa(レボドパ)が治療薬として処方されます。

非薬物治療

『認知症疾患診療ガイドライン2017』によれば、研究報告はないものの、認知機能低下や幻視に対して、社会交流や環境刺激が効果がある可能性が指摘されています。

また、ストレスマネジメント法によりBPSDが軽減する報告があります。

3.前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)の治療

FTDは根治療法がなく(21介71)、薬物治療も十分なエビデンスがありません。そのため、非薬物治療として、行動学を踏まえたケアや行動療法などが治療の中心となりますが、行動異常や介護者の負担を減らすことが可能な場合があるとされています。

認知症患者へのケア・対応

(30介77、30介86、27介84、21介104)

相手を受け入れる

さまざまな症状があっても、本人の自己決定や感情、自尊心を尊重することが基本です。

実際の認知症患者さんは、自分は人格を持った一人の人間であり、ちゃんと生きていくことができると考えています。

出典:DIPEx JAPAN『健康と病いの語りデータベース』認知症患者の語りウェブページ

そのため、当たり前ですが、ケアのしやすさなど、医療・介護提供者側の発想で行動を制限したり、幻視・幻想を否定したり、説得するなどは自尊心を損なうため、いったん相手の理由・主張を受け入れるなど、本人が受け入れやすい対応が必要です。

具体的には、財布を盗られたなどのもの盗られ症状に対して、財布が盗られたかどうかの事実を確認するのではなく、本人の主張を受け入れて、一緒に財布を探すなどが適切な行動となります(29介84)。

イギリスの心理学者キットウッドは、このような「その人らしさ」を支えるケアとして、『パーソン・センタード・ケア(person-centred care)』を提唱しました(27介77)。

コミュニケーションにおいては、相手が理解しやすいよう、なじみのある言葉で一つ一つ簡潔に伝え、不安が強いときには手をつなぐなどのボディタッチも有効です(20介45)

生活を支える

認知症でも理解できること、可能な動作・作業は多くあるので、日常生活動作などは本人のいまある能力や機会を最大限に引き出し(21介44、24介84)、本人が行っていることを手助けする(30介83、22介104)など、自立した行動を促すことが大切です。

そのためには、例えば記憶障害に対しては、部屋・トイレに表示や目印をつける(25介85、22介44)、エピソード記憶障害には、活動についての思い出話をしながら支援する(23介39)などが有効です。

認知症患者の家族へのケア

相手を受け入れることを理解してもらい、介護の辛さを受け止める

家族側に対しても、認知症患者に対する受容的な姿勢の重要性を理解して頂く必要がありますが、認知症の家族は、自分の家族が認知症となったことへの心理的不安、家族のことすら認識してもらえない辛さ、介護の身体的負担など様々な負荷があります。

出典:DIPEx JAPAN『健康と病いの語りデータベース』認知症患者の語りウェブページ

そのため、家族の辛さを傾聴しつつ、認知症患者を否定しないかかわりを勧めます(29介86、25介86)。

また、認知症患者を介護する家族が抱える孤立感に対しては、共通の体験をしている人が多い家族介護者の会を紹介する(26介86)ことも一つの手段です。

とりわけ患者がまだ労働世代なのに認知症が発症した若年性認知症の場合、その患者が支えていた家計に対しての不安が家族に生じるため、雇用保険制度や障害福祉サービス等の紹介などが重要となります(28介86)。

認知症をサポートする施設

認知症患者・利用者のケアは家族だけでは負担が大きいため、その負担を支えられるよう、国が様々な施設・制度を用意しています。

これらの活用についての情報提供も、医療・介護職が行うべきケアの一つです。

認知症疾患医療センター

認知症医療において地域の拠点として、他の医療機関や介護施設と連携を推進しながら、認知症の鑑別診察、BPSDへの対応、家族の相談、医療情報提供などを行うとともに、認知症にかかわる人材の育成・研修なども行う施設です(26介85)。

国がすすめる認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で示された政策の一つとして、各都道府県が病院・診療所に指定して設置する施設で、2015年時点で全国に336か所設置されています。
参考:認知症疾患医療センター一覧

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

利用者同士が少人数でなじみの関係を形成し、また、介護スタッフとともに家庭的な共同生活を送ることで、認知症の進行を遅らせることを目的としています。(29介77、24介77)

認知症対応型通所介護

(25介77、24介79、20介114)
認知症の利用者を対象に専門的なケアを提供する地域密着型のサービスです。

利用者が可能な限り自宅で自立した生活ができるよう、利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供し、利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。

地域包括支援センター

(27介86)
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネ)などを配置して、地域住民の健康維持と福祉増大を目的に市町村が設置する施設です。

具体的は、住民の各種相談に応じ、ケアマネによる介護予防や、民生委員を活用して専門機関につなげたり(29介85)、成年後見制度の活動促進や虐待・消費者被害の防止などの権利擁護に取り組む(24介86)など、制度横断的に行政を活用したサポートを行います。2011年現在で全国に4328施設あります。
(出典:平成24年度老健事業「地域包括支援センターにおける業務実態に関する調査研究事業報告書」)

日常生活自立支援事業の専門員

(28介85)
認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。

都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施しているもので、医療・介護的なサポートというより、福祉的な生活支援が主眼となります。

認知症サポーター

(29介85、27介85)
職種を問わず、認知症患者やその家族に手助けをする人で、講座を受講すればどなたでもなることができます。

こちらも新オレンジプランに基づいており、都道府県、市町村、全国的な職域団体などが実施主体となり、認知症サポーター養成講座を実施しています。

なお、講座は1回60~90分程度で、修了者にはオレンジリングが渡されます。

認知症に関連する制度

・成年後見制度:この制度は本人の判断力の程度に応じて活用するものとなりますが、認知症患者が、認知機能が低下する前に後見人の契約を結ぶ必要があります。 なお、後見人は個人だけでなく、法人もなることが可能です(24介78)

<文献>
1)日本神経学会編:認知症診療ガイドライン2017.2017年
2)長谷川典子、池田 学:認知症とせん妄.日本老年医学会雑誌 51(5)2014年

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