【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問125 臨床「CKDの栄養管理」

35-125 CKD患者に対するたんぱく質制限(0.8~1.0g/kg 標準体重/日)に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)糸球体過剰濾過を防ぐ効果がある。
(2)重症度分類ステージG1の患者に適用される。
(3)エネルギー摂取量を20kcal/kg 標準体重/日とする。
(4)アミノ酸スコアの低い食品を利用する。
(5)制限に伴い、カリウムの摂取量が増加する。

正解:1

【解説】

(1)○:糸球体過剰濾過を防ぐ効果がある。
CKDではさまざまな原因により機能するネフロンが減少したり、糸球体での孔が大きくなるなど、血液を濾過する機能が低下しているため、本来ろ過されないはずのたんぱく質(アルブミン、クレアチニンなど)を過剰にろ過(通過させて)してしまい、尿中へ排泄しています。

したがって、CKDで腎臓の糸球体での濾過の負担を減らすために、たんぱく質の摂取を制限します。
また、たんぱく質の摂取自体を減らすことで、糸球体での過剰な濾過を防ぐことができます

(2)×:重症度分類ステージG3aの患者に適用される。
CKDでは、腎機能が本格的に低下したといえるeGFR60mL/分/1.73m2未満となったステージG3aから、たんぱく質摂取量の制限を行い、0.8~1.0g/kg 標準体重/日とします。

CKDステージG1~2においては、たんぱく質は腎負担になるものの、たんぱく質不足やエネルギー不足によって体たんぱくの異化が亢進するため、たんぱく質は過剰な摂取をしないとされています。

(3)×:エネルギー摂取量を25~35kcal/kg 標準体重/日とする。
CKDでは、たんぱく質を制限するものの、たんぱく質不足による体たんぱくの異化亢進のおそれがあるため、エネルギー摂取量の制限を目的としていません

したがって、CKDステージのG1~5においては、エネルギー摂取量を25~35kcal/kg 標準体重/日と標準程度にすることが推奨されています。

(4)×:アミノ酸スコアの高い食品を利用する。
アミノ酸スコアとは、食品における不可欠(必須)アミノ酸の含有量を点数化したものです。
不可欠(必須)アミノ酸は複数ありますが、不可欠(必須)アミノ酸は1つでも欠けると、それらの栄養価が制限されるため、その食品においていずれの不可欠(必須)アミノ酸も十分量があるかを点数化しています。

つまり、アミノ酸スコアは点数が高いほど、不可欠(必須)アミノ酸が十分な栄養価を発揮できます。

CKDにおいても糸球体への負荷を減らすためには、効率的にたんぱく質を摂取する必要があるため、アミノ酸スコアが高い食品の摂取が重要です。

(5)×:制限に伴い、カリウムの摂取量が減少する。
通常、食事で摂取したカリウムは糸球体で濾過されて尿中に排泄されますが、CKDでは糸球体濾過機能が低下するため、カリウムの排泄が低下して、高カリウム血症を生じます
カリウムは心臓の興奮伝導にかかわるため、高カリウム血症は不整脈のリスクを高めます

したがって、CKDではステージが進みカリウム排泄能が低下するにつれて、カリウム摂取量が制限されます。

0.8~1.0g/kg 標準体重/日のたんぱく質制限を行うステージG3aでは、カリウム摂取量の制限はありませんが、ステージG3b(eGFR44~30 mL/分/1.73m2)では2,000mg/日、ステージG4~5(eGFR30 mL/分/1.73m2未満)では1,500mg/日の制限が推奨されています。

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