【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問115 臨床「経腸栄養剤」

35-115 経腸栄養剤に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)消化態栄養剤は、窒素源に低分子ペプチドを含む。
(2)成分栄養剤は、半消化態栄養剤より浸透圧が低い。
(3)血糖管理を目的とした経腸栄養剤は、脂肪エネルギー比率を 15%Eとしている。
(4)肝不全用経腸栄養剤は、芳香族アミノ酸が強化されている。
(5)免疫賦活を目的とした経腸栄養剤は、n-6系脂肪酸が強化されている。

正解:1

【解説】
(1)○:消化態栄養剤は、窒素源に低分子ペプチドを含む。
消化態栄養剤は、半消化態栄養剤よりも吸収しやすいよう、たんぱく質を分解したジペプジドおよびトリペプチドなどの低分子ペプチドを窒素源としています。

消化態栄養剤よりもさらに吸収しやすいようにした成分栄養剤では、消化(≒分子の分解)をしなくて済むように、低分子ペプチドをさらに分解したアミノ酸を窒素源としています。

(2)×:成分栄養剤は、半消化態栄養剤より浸透圧が高い。
 半消化態栄養剤の窒素源は卵白、乳たんぱく、カゼイン、大豆たんぱくですが、成分栄養剤の窒素源は低分子ペプチドや結晶アミノ酸などを用いており、成分栄養剤の方が水分に栄養素が高濃度で溶けているため、高浸透圧となっています。

(3)×:血糖管理を目的とした経腸栄養剤は、脂肪エネルギー比率を25~50%Eとしている。
一般的な経腸栄養剤のエネルギー比は、たんぱく質15~20%、脂質25%以下、炭水化物50~60%となっていますが、糖尿病に適した経腸栄養剤は、糖質によるエネルギー摂取を控えるため、脂質によるエネルギー摂取量(脂肪エネルギー比)が高くなります

(4)×:肝不全用経腸栄養剤は、分枝アミノ酸が強化されている。
肝疾患では肝機能が低下することで、筋肉でアンモニア(たんぱく質の代謝物)が処理されますが、その際に分枝アミノ酸(BCAA)が利用されます

また、肝疾患では炎症状態が持続するため、エネルギー消費量が高まり、エネルギー不足となります。
分枝アミノ酸(BCAA)は肝臓でエネルギーとして活用されやすく、肝臓でのエネルギー産生(糖新生)やアルブミン合成を促進するため、肝不全用経腸栄養剤では、分枝アミノ酸(BCAA)が強化されています。

(5)×:免疫賦活を目的とした経腸栄養剤は、n-3系脂肪酸が強化されている。
n-6系脂肪酸もn-3系脂肪酸も同じ多価不飽和脂肪酸ですが、n-6系脂肪酸であるリノール酸から合成されるアラキドン酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性サイトカインの材料となるため、n-6系脂肪酸は炎症系を強め、免疫機能を増悪させます

一方、n-3系脂肪酸であるリノレン酸から合成されるエイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)は、抗炎症性の伝達物質(メディエーター)を生成して、アラキドン酸による炎症を抑制することが知られています。

したがって、免疫機能を制御するためには、n-3系脂肪酸が強化されます。

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