【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問129 臨床「COPDの栄養管理」

35-129 70歳、男性。高 CO2血症を認めるCOPD 患者である。この患者の栄養管理に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)たんぱく質摂取量は、0.5g/kg標準体重/日とする。
(2)脂肪の摂取エネルギー比率は、40%Eとする。
(3)炭水化物の摂取エネルギー比率は、80%Eとする。
(4)カルシウム摂取量は、300mg/日とする。
(5)リン摂取量は、500mg/日とする。

正解:2

【解説】
(1)×:COPD患者では、たんぱく質摂取量は、1.0~2.0 g/kg標準体重/日とする。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、呼吸困難により呼吸筋が消耗するとともに、炎症によるエネルギー必要量も増大します。
したがって、COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、高エネルギー・高たんぱく質食が基本となります。

たんぱく質は十分に摂取する必要があるため、0.5g/kg標準体重/日では十分とはいえません。

(2)○:COPD患者では、脂肪の摂取エネルギー比率は、40%Eとする。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、咳などにより呼吸や食事が困難となり、炎症によりエネルギー必要量が増大するため、エネルギー不足による低栄養を生じやすい疾患です。

したがって、1回当たりの食事量を通常より減らしながら複数回に分けて摂取する分割食が薦められます。また、1回当たりの食事で効率的にエネルギー摂取を行う必要があるため、脂質によるエネルギー比率を高めることが推奨されます。

脂質の摂取が推奨されるのは、国試レベルではCOPDだけと覚えておきましょう!

(3)×:COPD患者では、炭水化物の摂取エネルギー比率は、50%Eを目安とする。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、エネルギー必要量が増大しますが、炭水化物は二酸化炭素を発生しやすく、呼吸商が脂質よりも高い栄養素です。

COPDでは肺胞において酸素と二酸化炭素のガス交換が十分にできなくなるため、二酸化炭素を生じやすい炭水化物でエネルギー必要量を充足しようとすると、二酸化炭素の交換・排出能が低下するCOPD患者ではアシドーシス(身体が酸性に傾く)を引き起こすおそれがあります。

設問にも「高 CO2血症を認める」とあるように、二酸化炭素が過剰となっている患者ですので、呼吸商の高い炭水化物の過剰な摂取は控え、通常よりもやや低い程度に抑えます。

(4)×:COPD患者では、カルシウム摂取量は、750 mg/日とする。
リン、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質は呼吸筋の機能維持に役立っているため、COPDにおいても、摂取を制限する必要はなく、むしろ十分に摂取する必要があります。

日本人の食事摂取基準2020年版においては、30~74歳男性で750mg/日の摂取が推奨量(RDA)として設定されています。

COPDだからカルシウムを何mg摂取するということではなく、十分に摂取するということになります。

(5)×:COPD患者では、リン摂取量は、1,000 mg/日とする。
COPDではカルシウムと同様に、リンも十分に摂取する必要があります。また、リンはエネルギー貯蔵物質であるATPの合成に必要な栄養素ですので、COPDのような炎症性によるエネルギー必要量が増大する疾患では、摂取が必要となります。

日本人の食事摂取基準2020年版においては、30~74歳男性で1,000mg/日の摂取が目安量(AI)として設定されています。

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