『看護小規模多機能型居宅介護(看多機/かんたき)』って何?―訪問看護だけでなく緊急の宿泊にも対応するマルチな施設

看護小規模多機能型居宅介護(看多機/かんたき)の定義

在宅医療・介護サービスの一つである『看護小規模多機能型居宅介護』は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問(介護)」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行う地域密着型サービスです1)

地域の特性に合わせて設置されるため、利用者の居住市町村が監督・実施します。

(厚生労働省:『どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護』より転載)

『看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)』は平成29年時点で全国で390事業所しかなく、他のサービスに比べて、圧倒的に数が少ないですが、近年、そのニーズが高まり、設置数が急激に拡大しています。

(厚生労働省:『平成20年介護サービス施設・事業所調査の概況』~平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況』より編集部作成)

平成24年(2012年)にこの『小規模多機能型居宅介護』に『訪問看護』をあわせた『複合型サービス』が創設されました。

その後、提供するサービス内容のイメージがしにくいとの指摘を踏まえ、平成27年度介護報酬改定で『看護小規模多機能型居宅介護』と名称変更されました

『看護小規模多機能型居宅介護』の目的・活用法2)

『小規模多機能型居宅介護』と同様、『看護小規模多機能型居宅介護』は、利用者の「通い」を中心とし、短期間の「宿泊」、「訪問介護・看護」などのサービスを組み合わせて提供します。

1.退院直後の在宅生活へのスムーズな移行

入院後、在宅医療にシフトする場合、まだ介護力が高くなく、自分たちの仕事もある家族が、いきなり利用者を介護することは負担が
大きいです。そのため、退院直後は宿泊サービスを利用しながら、介護者である家族は吸引、清拭・おむつ交換、陰洗、胃ろう注入等の方法について指導を受け、徐々に自宅へと移行します。

2.がん末期等の看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続

がん末期の利用者が退院し、自宅での生活を送る際、病状が安定している場合は通所サービスで対応できますが、病状が悪化した場合は、通所サービスを減らし、訪問看護・介護サービスを増やすことで柔軟に対応できます。

3.家族に対するレスパイトケア、相談対応による負担軽減

介護者が介護疲れを癒したり、緊急で発生した自分の用事を済ませるために利用者を宿泊させるレスパイト(=一時休止、休息)は、老老介護となっている家庭や、忙しい介護者にとってのケア(支援)となります。病院でもレスパイト入院の機能はありますが、『看護小規模多機能型居宅介護』にもレスパイトケアがあります。

『看護小規模多機能型居宅介護』の利用対象者

在宅生活をしており、要支援または要介護1~5の認定を受けている方が、看護小規模多機能型居宅介護事業所と契約・登録することで利用できます。『看護小規模多機能型居宅介護』は地域に帰属しているサービス(地域密着型サービス)のため、利用者自身が居住している市区町村の事業所の利用が原則となります。

『看護小規模多機能型居宅介護』の利用の際は、利用者・介護者はケアマネージャーと相談し、空いている看護小規模多機能型居宅介護事業所を調べて貰う必要があります。また、ケアプランについても『看護小規模多機能型居宅介護』に所属しているケアマネージャーが作成することになります。

看護小規模多機能型居宅介護に登録できる利用者定員は29名以下 で、通いの定員18名以下、宿泊の定員9名以下となっています。

(厚生労働省:『看護小規模多機能型居宅介護の概要(平成27年度) 』より転載)

『看護小規模多機能型居宅介護』のメリット

契約の一本化でいつものスタッフが来て安心

これまで別々の事業所から「宿泊」「訪問」などのサービス提供を受けていましたが、同一施設でこれらのサービス提供を受けるため、別々の契約が不要となります。また、サービス提供者が同一施設となり、顔なじみのスタッフとなるため、安心感があります。

柔軟なサービス:医療的ケアや緊急宿泊にも対応

小規模多機能介護と同様、「泊まり」「通い」「訪問」の各サービスを利用者の状況に合わせて組み合わせて受けることができるます。また、看護の機能が追加されているので、介護サービスのみの『小規模多機能型居宅介護の概要』に比べて、病状の悪化や看取りなどより高い医療ニーズに対しても対応できます。

『看護小規模多機能型居宅介護』の開設基準3)

配置基準

常勤換算2.5以上の看護職員(うち常勤保健師や看護師1以上)、 専従の介護支援専門員が主な配置人員です。

管理者基準

・特養、老健、老人デイサービス、グループホーム、小規模多機能型居宅介護事業所などの従業員・訪問介護員等として、認知症である者の介護に従事した経験が3年以上あり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者で常勤専従者
・保健師もしくは看護師で常勤専従者

施設基準

①居間及び食堂は機能を十分に発揮しうる適当な広さ
②宿泊室
・個室の定員:1人(利用者の処遇上必要と認められる場合は2人)
・個室の床面積:7.43㎡以上(病院又は診療所の場合は6.4㎡以上(定員1人の場合に限る))
・個室以外の宿泊室:合計面積が1人当たり概ね7.43㎡以上で、プライバシーが確保された構造
③家族との交流の機会の確保や地域住民との交流を図る観点から、住宅地等に立地

参考文献
1)厚生労働省:『看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)について』
2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社看護小規模多機能型居宅介護の事例集~住みなれた地域で自分らしく~』(平成27(2015)年3月)
3)厚生労働省:『看護小規模多機能型居宅介護の基準等(平成27年度)』
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