【第30回(2018年)介護福祉士国家試験過去問解答・解説】問題59

30-059 終末期にある利用者を施設で看取る家族への支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 毎日面会に来るように促す。
2 家族が利用者のためにできることを提案する。
3 積極的な情報提供は控える。
4 感情を表出しないように助言する。
5 パブリックスペースを用意する。

正解:2

【解説】
終末期において、利用者本人や家族が納得のできる看取りを行うために、どのように意思決定を行うべきかについて、平成30年(2018年)の3月に厚生労働省から『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』が発表されました。

このガイドラインは、医療・介護・法曹・患者の有識者からなる検討会により策定されたもので、終末期の患者・利用者においてどのような医療やケアを進めるべきかの指針を示したものです。

終末期における医療・ケアの基本は、本人の状態に応じた医学的検討と情報提供を経たうえで、患者・利用者本人と医療・介護チームとの合意形成を踏まえて、患者・利用者本人の意思決定を基本として、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行うとされています1)

1=×:終末期だからといって家族や利用者本人が望んでいるかどうかわからない面会を促したり強要することは、両者の意思決定を尊重しているとはいえず、また双方に負担をかけるだけとなり不適切ですので、この選択肢は誤りです。

また、いつ利用者が死ぬかわからないことを理由に家族に毎日面会を求めることが適切でない理由として、死に間際に利用者・患者のそばにいることだけが、その利用者・患者のケアという訳ではないことがあげられます。

日本では、利用者の希望にかかわらず、死に間際に利用者のそばにいることが美徳とされがちですが、これが介護者や医療・介護従事者の負担となっている問題もあります。

大谷弘行先生(九州がんセンター 緩和ケアチーム)の研究によれば、“患者の臨終が近づいてきた時には、家族の負担感も考慮しつつ、家族に患者の臨終の際の立ち会いの希望を確認した方がよい”とあり、実際に臨終に立ち会えなかった場合も、その後の家族の抑うつや複雑性悲嘆との有意な相関はなく、むしろ、“臨終までに患者が大切な人に伝えたいことを伝えたかどうか”が重要であると報告2)されています。

2=○:終末期において家族は利用者にできることをしたい、できる限り全力を尽くしたいと考えるようになります。しかし、利用者の意識レベルが低下して意思表現が難しくなったり、そのような利用者に対して家族が何をすべきか判断ができなくなる場合があります。
そのため、看取りを行う家族に対しては、利用者に対して具体的に何をしてあげたらよいかを説明することが重要になる3)ため、この選択肢は正しいです。

3=×:看取りを行う家族に対しては、死の過程で起こる状態変化や医療方針、生活ケアの意義や社会資源・サービスについて積極的に情報提供を行い、心理的・経済的負担を軽減しながら、納得のいく最期を迎えられるようにする3)ことが適切ですので、この選択肢は正しいです。

4=×:終末期において家族はさまざまな不安やストレスを抱えることになりますが、その際に有効なのが『感情表出』です。泣くことなど感情を表出することで、心のつかえが取り除かれ、感情が浄化されるカタルシスを得ることができます。

終末期の家族においてもこの感情表出によるケアを活用し、家族の心理・精神的負荷を軽減しながら、大切な人の変化を受け入れるプロセスを踏んでいくことが適切4)ですので、この選択肢は誤りです。

参考までに、在宅医療・介護に取り組んでいる大阪府看護協会看護師職能委員会Ⅱ作成による『看取りガイドライン 自然な死へのアプローチ 介護施設、在宅療養、訪問看護における看護職員等のために』より下記を引用します。

家族は「利用者の死が近い」という現状に向き合い、自分自身を保っていくために“精神的に支えられたい”“親身になって話を聴いて欲しい”という気持ちを持つようになります。不安と緊張の中で過ごす家族は心身ともに大きなストレスを抱えていますが、“利用者の前で泣くことはよくない”と感情を自分の胸に抑えこんでいることがよくあります。そこで、落ち着いて話せる場所を確保して話を聴いたり、日頃から家族に関心を寄せた声かけを行うことが、家族の感情表出のためのケアへとつながります。

5=×:人生の最終段階をすごす環境とは生活空間であり、利用者本人や関係者がその思いや気持ちなど、ごく個人的な情報を気兼ねなくやりとりできるプライベートな空間です。みなに開かれたパブリックスペースの用意はこの段階では不適切ですので、この選択肢は誤りです。

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