【第30回(2018年)介護福祉士国家試験過去問解答・解説】問題60

30-060 施設において,介護福祉職の行う死後の処置として,適切なものを1つ選びなさい。

1 義歯ははずす。
2 衣服は施設が指定したものを用いる。
3 着物の場合は右前に合わせる。
4 着物の場合は帯紐を縦結びにする。
5 死後の処置は,死後3 時間経過してから行う。

正解:4

【解説】
死後、ご遺体となった方へ行うケアを『エンゼルケア』といいます。

患者・利用者さんのご遺体の保清を行うとともに、ご遺体に対し化粧や更衣などの身だしなみを整えて生前の姿を取り戻して送りだすことで、故人の尊厳を保つとともに、その方のケアに携わった方へのグリーフケア(親しい人を喪失したことによる悲嘆のケア)の効果を期待したものです。

エンゼルケアは小林 光恵先生(エンゼルメイク研究会代表/作家/看護師)や伊藤 茂先生(長沙民政職業技術学院 遺体管理学 教授)が第一人者として活躍されています。

1=×:エンゼルケアでは故人の生前の元気な姿に整える必要があるため、死後硬直がはじまる前に早めに臭気がしないよう口腔ケアを行い、義歯を装着することが適切1)ですので、この選択肢は誤りです。

2=×:故人への衣類は施設が指定したものに限定するとは限らず、“故人の生前の姿を取り戻す”という観点から、その人らしい衣類を着用させるが望ましいと考えられるため、この選択肢は誤りです。

3=×:通常、着物は右側を前に合わせて着ます。左側を前に合わせて着るのは故人に着せる『死に装束』の場合です2)ので、この選択肢は誤りです。

4=○:故人に着せる『死に装束』では、帯紐を立て結びにするのが日本の風習として適切2)ですので、この選択肢は正しいです。

5=×:人間は死後、筋肉への酸素供給がなくなり、代謝が停止します。その際、乳酸が生成されて体のpH(ペーハー)が低下して酸性に傾き、筋肉を収縮するタンパク質であるアクトミオシンが生成され、筋肉は硬い状態になる『死後硬直』が起きます。
死後硬直は早い部位では1時間以内から発生してしまい、ご遺体が乾燥するため、速やかなエンゼルケアが必要となる1)ため、この選択肢は誤りです。

参考文献
1)小林光恵:『もっと知りたいエンゼルケアQ&A』.医学書院,2012年
2)『おそうしき読本』.逆さ事とは
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