32-125 高カイロミクロン血症の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)炭水化物の摂取エネルギー比率は、30%E以下とする。
(2)たんぱく質の摂取エネルギー比率は、10%E以下とする。
(3)脂質の摂取エネルギー比率は、15%E以下とする。
(4)n-3系脂肪酸の摂取量は、制限する。
(5)食物繊維の摂取量は、制限する。
正解:3
【解説】
高カイロミクロン血症は、血中のトリグリセリドが1,000mg/dL以上かつ絶食後のカイロミクロン証明が診断基準となる脂質異常症です。
(1)×:炭水化物の摂取エネルギー比率は、50~60%Eとする。
高カイロミクロン血症を含む脂質異常症では、脂質でのエネルギー摂取を減らすため、その分炭水化物によるエネルギー摂取が結果的に増えることになります。
この場合、血糖が急激に上がらないよう、グリセミック指数(GI)が低い食事が推奨されています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版』)。
(2)×:たんぱく質の摂取エネルギー比率は、15~20%E程度とする。
高カイロミクロン血症を含む脂質異常症では、たんぱく質の摂取制限はありません。また、炭水化物と同様に、脂質でのエネルギー摂取を減らすため、その分たんぱく質によるエネルギー摂取が結果的に増えることになります。
健常者でのたんぱく質の摂取エネルギー比率は12~15%Eですので、これからやや多い15~20%E程度となります。
(3)○:脂質の摂取エネルギー比率は、15%E以下もしくは20g以下とする。
高カイロミクロン血症では、血中のカイロミクロンが増加する疾患です。
カイロミクロンとは、脂質(トリグリセリド)が胆汁によって乳化されて小腸から吸収された後に、トリグリセリドやビタミンなどを運ぶために合成されるリポたんぱく質です。
カイロミクロンはリポたんぱく質リパーゼによってカイロミクロン中のトリグリセリドが分解されてカイロミクロンレムナントに代謝されながら肝臓へと運ばれます。
このリポたんぱく質リパーゼによる代謝がなんらかの理由で妨げられ、血液中のカイロミクロン濃度が高まるのが、高カイロミクロン血症です。
高カイロミクロン血症では、脂質を多く含むカイロミクロンが代謝されないため、他の脂質異常症よりも厳格に脂質制限を行う必要があり、15%E以下もしくは20g/日とすることが推奨されています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017 年版』)。
(4)×:n-3系脂肪酸の摂取量を、増やす。
n-3系脂肪酸は、生体内で合成できず、欠乏すれば皮膚炎などを生じる必須脂肪酸です。
また、動脈硬化への改善効果が期待されるため、『日本人の食事摂取基準2020年版』では目安量が設定されています。
脂質異常症では動脈硬化のリスクが高まるため、n-3系脂肪酸の摂取が推奨されています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版』)。
(5)×:食物繊維の摂取量は、増やす。
食物繊維、とりわけ水溶性食物繊維には、コレステロールを減らす効果が知られています。
したがって、脂質異常症では食物繊維の摂取を増やすことが推奨されています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版』)
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