Aさん(65歳,男性,要介護2 )は,昨年,アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断された。妻は既に亡くなり,娘のBさん(35 歳)は遠方に嫁いでいる。
Aさんは,現在,認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活している。Aさんは介護福祉職に対して,「Bは頭もいいし,かわいいし,きっと妻に似たんだな」とよく話していた。
Bさんが面会に来た時,「誰だい。ご親切にありがとうございます」というAさんの声と,「私はあなたの娘のBよ,忘れちゃったの」「お父さん,しっかりしてよ」と怒鳴るBさんの声が部屋から聞こえた。
介護福祉職がAさんへのアドボカシー(advocacy)の視点からBさんに行う対応として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 Aさんへの行動は間違っていると話す。
2 Bさんに対するAさんの思いを話す。
3 Aさんの成年後見制度の利用を勧める。
4 Aさんとはしばらく面会しないように話す。
5 Bさんの思いをAさんに伝えると話す。
正解:2
【解説】
『アドボカシー(advocacy)』とは、権利の代弁や権利擁護のことです。
もともとは法律用語ですが、近年、治療・終末期における意思決定支援、『ACP(アドバンス・ケア・プランニング)』など、医療・介護分野でも使われるようになってきました。
認知症やせん妄、意識障害など、意思を表明することが難しい患者や利用者に代わり、その意思決定を支援したり、自己決定権を代行することを言います。
1=×:Aさんは自分の娘であるBさんを認識する能力が低下しており、Aさんの認識・判断の正誤を指摘することは不適切です。
2=○:介護職として、被介護者であるAさんの考え・思い(自己決定権)を本人に代行し、娘であるAさんに伝えることは適切です。
3=×:家族であるBさんは成年後見制度の成年後見人となりえますが、成年後見人は負担も多く、後見業務の内容を家族に報告する義務もないため、安易に制度利用を進めることは不適切です。
4=×:認知症患者だからといって面会を断つことは、認知機能の低下にもつながり、不適切です。むしろ、Bさんには認知症についての理解を深めてもらい、面会を継続することが重要です。
5=×:娘であるBさんがAさんに直接思いを伝えることが一番であり、介護職が特段の理由なしに介護対象でない人の行為を代行する必要はないため、不適切。
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