30-012 「障害者差別解消法」に基づく対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
(注)「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
1 車いすを使用している障害のある人がバスに乗車する時に,介助を依頼された乗務員が身体障害者手帳の提示を求めて,乗車を許可した。
2 聴覚に障害のある人が市の窓口に来た時に,窓口担当者が手話通訳者と一緒に来るように伝えた。
3 視覚に障害のある人がレストランに一人で入った時に,店員が介助者と一緒に来るように求めた。
4 知的障害のある人が市役所の会議に出席した時に,本人の申出に応じて,わかりやすい言葉で書いた資料を,主催者が用意した。
5 精神障害のある人がアパートの賃貸契約をする時に,不動産業者が医師の診断書の提出を求めた
正解:4
【解説】
『障害者差別解消法』=『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律』は平成28年(2016年)に施行された法律で、“不当な差別的取り扱いの禁止”と“合理的配慮の提供”を求めるものです。
第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
本法律が指す『合理的配慮』とは、“障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重過ぎない範囲で対応すること”とされています。
具体的には、車イスをつかっている人が公共施設に入ろうとしている際、入り口の段差を乗り越えられず困っている場合、段差を乗り越える手伝いをしたり、携帯スロープを設けたりするのが合理的配慮であり、逆に正当な理由なく入場を拒むようなことが不当な差別的扱いとなる、というようなことです。
様々な場面での合理的配慮があるため、内閣府による『合理的配慮サーチ』のデータ集を確認し、理解を深めましょう。
1=×:同法律の対象は障害者ですが、“法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。”1)とされています。
本設問では、車いすを利用していることから障害者であることは明白であり、障害者手帳の提示を求めることは不当な差別的取り扱いとなるため、この選択肢は誤りです。
2=×:聴覚障害者に対して、筆談などによる意思疎通の可能性を考慮せず、手話通訳者の同行を求めることは不当な差別的取り扱いとなるため、この選択肢は誤りです。
3=×:聴覚障害者に対して、事業者側がレストランのサービスやメニューをわかりやすく説明すること(=合理的配慮)なしに、介助者の同行を求めることは不当な差別的取り扱いとなるため、この選択肢は誤りです。
4=○:知的障害者に対しての合理的配慮として、本人からの意思表示のもと、文書をわかりやすい表現にしたり、概要をまとめたりすること、振り仮名を付すことなどが挙げられており、この選択肢は正しいです。
5=×:『障害者差別解消法』の制定を踏まえて、国土交通省は平成27年(2015年)に『国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針』を発表しました。
不動産関係は国土交通省の管轄事業であり、同指針には賃貸契約について“宅建業者が、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。))があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る”ことを差別的取り扱いの具体例としてあげています。
本選択肢では、賃貸契約において健常者であれば求められない医師の診断書の提出が求められており、不当な差別的取扱いであるため、この選択肢は誤りです。
[…] 1)厚生労働省:『日常生活用具給付等事業の概要』 前の問題へ 次の問題へ (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({ google_ad_client: […]