【第30回(2018年)介護福祉士国家試験過去問解答・解説】問題20

Hさん(75歳,女性)は, 1か月前に介護老人福祉施設に入所した。脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症として,左片麻痺があり,認知症(dementia)と診断されている。看護師として長年勤め,退職時は看護部長であった。

Hさんは日頃から,介護福祉職に苦情を言い,周りの利用者とのトラブルも絶えない。特に日中の入浴に関しては,拒否が強く,「私は仕事があるから,夜に一人でお風呂に入りたい」という訴えが続いている。
介護福祉職のHさんへの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 施設長から,特別扱いはできないことを説明してもらう。
2 夜の,居室での全身清拭に変更する。
3 Hさんの対応を,施設の看護職員に任せる。
4 家族から,既に退職していることを説明してもらう。
5 Hさんの働いていた頃の話を詳しく聴く。

正解:5

【解説】
本設問のHさんは認知症と診断されており、長年勤めた看護師であることに自身のアイデンティティをおいていることが伺えます。

このように認知症をもつ利用者へのケアにおいても、本人の自己決定や感情、自尊心を尊重することが基本です。

イギリスの心理学者キットウッドは、利用者の「その人らしさ」を支えるケアとして、『パーソン・センタード・ケア(person-centred care)』を提唱し、認知症になっても「いつでも・どこでも・その人らしく」暮らせるように支援し、本人の言動を本人の立場で考えることが基本であるとしています。

また、イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが提唱する『ユマニチュード』においても、「人間らしさ」を尊重したケアの実践が重要視されています。

そのため、医療・介護提供者側の発想で行動を制限したり、幻視・幻想と思われる体験や発言を否定したり、説得することなどはその人の自尊心を損なうため、いったん相手の理由・主張を傾聴し、受け入れるなど、本人が受け入れやすい対応が必要です。

1=×:Hさんの訴えは“自分を特別視してほしい”ことだとは言い切れません。また、Hさんの訴えに対して説得するのではなく、介護福祉職として利用者の考えや気持ちを傾聴することが求められるため、この選択肢は誤りです。
2=×:Hさんの意思は“夜に全身清拭をしてほしい”ことである根拠はなく、この選択肢は誤りです。
3=×:日常生活の支援は介護福祉職の役割であり、日常生活の支援を安易に看護師に任せることは不適切であるため、この選択肢は誤りです。
4=×:Hさんは認知症と診断されており、自身がすでに看護師ではなくなっていることを理解・納得してもらうことが困難であるため、説得は不適切な判断あり、この選択肢は誤りです。
5=○:Hさんの発言には“看護師である自分”というその人らしさが強く伺えるため、まずはそのその人らしさを尊重し、看護師としてのHさんについての話に傾聴し、受け入れることが必要であるため、この選択肢は正しいです。

参考文献&TIPS
1)日本神経学会:『認知症疾患診療ガイドライン2017

認知症の方へのケアについては国試頻出でもあるため、今一度確認しておきましょう。
介護福祉士国試過去問10年分を解析!必ず覚えたい認知症の治療・ケアのまとめ

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