【第34回(2020年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問32人体「内分泌疾患」

34-032 内分泌疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症がみられる。
(2)バセドウ病では、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の上昇がみられる。
(3)原発性甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇がみられる。
(4)クッシング症候群では、低血糖がみられる。
(5)原発性アルドステロン症では、高カリウム血症がみられる。

正解:3

【解説】
1=×:抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、低ナトリウム血症がみられるため、誤った選択肢です。

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)とは、抗利尿ホルモン(ADH)≒バソプレシンが、不適合な(不適切に)分泌されている症候群です。

平たく言えば、バソプレシン過剰症ですね。

バソプレシンとは脳の視床下部で合成され、下垂体の後葉から分泌される抗利尿ホルモンです。

バソプレシンは、腎臓に作用することで尿細管で尿となる水分の再吸収を促進する作用があります。利尿(尿の排出)とは逆に尿の排出を減らすので、抗利尿という訳です。

バソプレシンによって血液の水分が増えるため、相対的に血液中のナトリウム濃度は低下します。
したがって、バソプレシンを過剰に分泌する抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、低ナトリウム血症となります。

2=×:バセドウ病では、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の低下がみられるため、誤った選択肢です。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とは、自己免疫の異常により自己抗体が甲状腺を刺激することで、過剰に甲状腺ホルモン(T3、T4)を産生・分泌させてしまう免疫・代謝疾患です。

甲状腺ホルモン(T3、T4)は身体の代謝を促すホルモンであるため、甲状腺ホルモンが過剰となると代謝=エネルギー消費が高まり、体重減少がみられます。

甲状腺ホルモン(T3、T4)が高まるのだから、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)も高まるのでは?と思った人もいるでしょう。

甲状腺ホルモン(T3、T4)が増加すると、増加しすぎないよう視床下部と下垂体にはたらきかける負のフィードバックが作用します。

すると、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌は抑制され、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値は低下します。

なお、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)で特徴的な症状として、眼球突出があります。

バセドウ病では自己抗体の異常により眼の周りの筋肉や脂肪で炎症が起きます。その炎症によって腫れが起きるため、眼窩内圧(眼の中の圧力)が高くなり、眼球が前に押し出されます。

国試レベルでは、バセドウ病=体重減少・眼球突出と覚えておきましょう。

3=○:原発性甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇がみられるため、正しい記述です。

クレアチンキナーゼは筋肉に多くある酵素です。

甲状腺機能低下症(橋本病)では、代謝が低下して筋肉量が低下することで、筋肉に含まれるクレアチンキナーゼが血液中に漏出します。

したがって、甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値が上昇します。

4=×:クッシング症候群では、高血糖がみられるため、誤った選択肢です。

クッシング症候群とは、副腎皮質から分泌される糖質コルチゾールというホルモンが過剰となる症候群です。

コルチゾールは、糖・たんぱく質・脂質の代謝を調整しています。

コルチゾールは肝臓での糖新生(アミノ酸からグルコースを合成)を促進する働きや、たんぱく質を分解してアミノ酸とし、糖新生で活用させる働きがあります。

また、コルチゾールにはインスリン抵抗性を引き起こす働きもあります。

つまり、コルチゾールは糖を増加させる働きがあるので、コルチゾールを過剰分泌させるクッシング症候群では高血糖となります。

なお、コルチゾールは脂肪の分解を促進することで、血中の遊離脂肪酸とグリセロールの濃度を高めると同時に、脂質の合成も促進するため、クッシング症候群では、満月様顔貌・水牛肩・中心性肥満が生じます。

5=×:原発性アルドステロン症では、低カリウム血症がみられるため、誤った選択肢です。

アルドステロンは、昇圧物質であるアンジオテンシンⅡが代謝されて生じる昇圧ホルモンです。

アルドステロンはナトリウムを体内にとどめると同時にはカリウムを排出する働きがあり、これにより循環血液量を増やして血圧を高めます。

したがって、原発性アルドステロン症では、低カリウム血症となります。

電解質バランスを調整するうえで、ナトリウムとカリウムはシーソーの関係にあることを理解しておくとよいでしょう。

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