【第32回(2018年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問35人体「神経系疾患」

32-035 神経系疾患に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。

(1)ウェルニッケ脳症は、ビタミンB12欠乏で起こる。
(2)アルツハイマー病では、脳萎縮がみられる。
(3)アルツハイマー病では、見当識は保たれる。
(4)パーキンソン病では、片麻痺がみられる。
(5)パーキンソン病では、錐体外路症状がみられる。

正解:2・5

【解説】
1=×:ウェルニッケ脳症はビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こるため、誤った選択肢です。

ビタミンB1(チアミン)が不足すると意識障害(軽度~昏睡)や小脳失調を特徴とするウェルニッケ脳症を発症します。

2=○:アルツハイマー病では、脳萎縮がみられるため、正しい記述です。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)では、脳にタウたんぱくの異常な蓄積することでびまん性の老人斑を形成します。このびまん性老人斑が炎症性物質を増やすことでタウたんぱくが異常リン酸化を起こし、脳の神経原線維が変化することで脳神経細胞が萎縮して壊死します。

したがって、アルツハイマー型認知症では脳の萎縮と神経伝達障害による認知機能の低下が起きます。

3=×:アルツハイマー病では、失見当識が見られるため、誤った選択肢です。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)では神経伝達障害による認知機能の低下が起きるため、時間・場所や人物を認識する見当識が失われます。これを失見当識(しつけんとうしき)といい、アルツハイマー型認知症の典型的な症状としてみられます。

4=×:パーキンソン病では、片麻痺がみられる訳ではないため、誤った選択肢です。

パーキンソン病は、神経伝達物質であるドパミンが不足することで生じる神経疾患です。

手指が震えるような動き(震戦)や動きが遅くなる無動、手足の関節を曲げる時に生じるこわばり(筋強剛・固縮)などが特徴的です。

片麻痺は脳血管疾患などの後遺症でみられる症状で、脳出血や脳梗塞の好発部位である大脳基底核や視床の近くに運動神経(錐体路;すいたいろ)があり、運動神経が脳出血や脳梗塞で圧迫されることで、運動神経障害が生じます。

5=○:パーキンソン病では、錐体外路症状が典型的にみられるため、正しい記述です。

自分の意識で身体を動かす随意神経は錐体路にある一方、自分が無意識で身体を動かす不随意神経は錐体外路(すいたいがいろ)にあります。

手指が震えるような動き(震戦)や動きが遅くなる無動、手足の関節を曲げる時に生じるこわばり(筋強剛・固縮)などは無意識での動きですから、不随意神経をつかさどる錐体外路における症状です。


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