【第34回(2020年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問42人体「感染症」

 34-042 感染症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)わが国の肝細胞がんの原因として、B型肝炎ウイルスが最も多い。
(2)黄色ブドウ球菌は、グラム陰性球菌である。
(3)結核は、新興感染症である。
(4)レジオネラ感染症の原因は、生の鶏肉の摂取である。
(5)カンジダ症は、消化管に起こる。

正解:5

【解説】
1=×:わが国の肝細胞がんの原因として、C型肝炎ウイルスが最も多いため、誤った選択肢です。

日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン(第8版)(2020年版)』によれば、肝がんの65%はC型肝炎ウイルス(HCV)によるものだそうです。

肝がんの疫学についての問題で、肝がんの成因としてB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)のどちらが多いか?という、かなり細かな知識を問う問題かもしれません。

2=×:黄色ブドウ球菌は、グラム陽性球菌であるため、誤った選択肢です。

細菌の種類は、グラム染色に反応するかどうかでグラム陰性・陽性の2種類があり、また、細菌の形が丸いか細長いかで球菌・桿菌に分けられています

グラム染色とは、微細な細菌を顕微鏡で見やすくするために色で染めようとグラム医師が考えた細菌への染色法です。

グラム染色法では、細胞壁がある細菌は紫色に染色されるのが特徴です。逆に、細胞壁がない細菌はグラム染色では色が染まらず、代わりにサフラニンなどの赤い染料で染めて視覚的にわかりやすいようにしています。

黄色ブドウ球菌は、細胞壁がありグラム染色により紫色の丸い物体としてみえるため、グラム陽性球菌です。

3=×:結核は、再興感染症であるため、誤った選択肢です。

結核は結核菌という新しい菌が空気感染する感染症として、戦前に猛威を振るいました。
日本では1943年の結核死亡数は、約23.5万人を記録したほどです。

予防接種などの対策により、結核はほぼ終息していましたが、1990年代後半に再び罹患率の上昇がみられました。

このように、一度収束したものの再び勢力を興した感染症を再興感染症といいます。

したがって、結核は再興感染症となります。

新興感染症は新しい菌による感染症といい、SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなどが該当します。

4=×:レジオネラ感染症の原因は、入浴施設や空気調整器での繁殖であるため、誤った選択肢です。

レジオネラ感染症の原因となるレジオネラ菌は、土や水で繁殖する環境細菌です。

人工的に空気や水を循環させる環境で繁殖しやすく、加湿器やサウナ、循環型の温泉や大浴場などで感染がみられます。

レジオネラ=お風呂と覚えておきましょう。

生の鶏肉の摂取が原因となる感染症は、カンピロバクター感染です。

鶏肉や牛レバーなどに生息し、生食することで感染します。
鳥刺しなどでの食中毒は、カンピロバクターによるものです。

5=○:カンジダ症は消化管に起こるため、正しい記述です。

カンジダ症は真菌(カビ)であるカンジダによる感染症をいいます。

カンジダは普段からヒトの皮膚などに存在する常在菌で、免疫力が低下した際に、消化管粘膜や膣などの粘膜などから感染します。


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