今回のkaigoカフェは新食研とのコラボ!
2018年7月25日にLIFULL社にて開催された『未来をつくるkaigoカフェ』では、新宿区で食支援を行っている新宿食支援研究会(新食研)の代表である五島朋幸先生をプレゼンターに迎え、『食べること 生きること~食べられるまちづくりとは~』をテーマに訪問歯科から始まった地域での食支援について発表されました。五島朋幸先生
はじめは誰もが初心者!手探りではじめた訪問歯科
五島:私のことを知らない人も多いと思いますが、私は新宿区で訪問歯科をやっている五島朋幸といいます。
さて、歯科医にとって1997年というのは、『まずは外された入れ歯を入れに行こう!』という活動が始まった年でした。
というのも、この1997年に“口腔ケアによって誤嚥性肺炎が予防できるかもしれない”という論文1)が出たからです。
翌年1998年や2001年には“口腔ケアによって誤嚥性肺炎予防できますよ”という論文2)が出ました。
その流れに私はどっぷり乗っかったんですね。
その時は、まあ“入れ歯を入れられればいいでしょう”というぐらいの感覚でした。
そうしたら周りから、「訪問診療で歯科医が訪問するんだったら、口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防してくださいよ」という風に言われるようになったんです。
私としてはもう、「ええっ!?」という感じで、はじめは“誤嚥性肺炎って何?”という感じだったんです。
「口腔ケアは摂食・嚥下障害の訓練になるんだから、歯医者さんは訪問に行くんだったら、患者さんが食べられるまでの訓練をしっかりやってくださいね」って言われるようになったんですよ、いきなり(笑)。
というのも、私が大学を卒業したのが平成3年なのですが、それまで口腔ケアにおいて『誤嚥性肺炎』や『摂食・嚥下障害』という言葉をただの一言も聞いたことがなかったのです。
しかし、患者さんの家へ訪問に行ったら、周りから「口腔ケアをやって」と言われようになったんですね。
それまでは、“摂食・嚥下障害の人ってどんな人?”っていうくらいの認識で、“そういえば、入れ歯をちゃんと入れたのに食べれない人いたわ!”という感じだったですね。
摂食・嚥下障害があって口から食べられない患者さんがいっぱいいるんだと気づきまして、それを僕らがなんとか口から食られるようにしてあげなきゃいけない!と思って、摂食・嚥下リハビリテーションの本を買ってきて勉強しました。
だけど、当時は在宅で使えるような解説書が、ただの一つもなかったのです。
というのも、摂食・嚥下リハビリテーションというものは、病院で医師がいて、看護師さんがいて、検査技師さんがいて・・・となって初めてできる、そういう感じで、例えば、一人暮らしのおじいさんが口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションを独りでできるわけがないって感じだったんです。
どうすれば患者さんが自宅で生活をしながら、食事を支えられるかと考えて、せんべいを使ってみたりと、私も試行錯誤しました。
なんとか口から食べられるようになって、というのがここ5年ぐらいの話です。
みんなで“食べることは生きること”を支えることに気づく
チーム医療がはじまって、その中で“歯医者っていうのは、食べるための機能訓練をしてけばいいんだ”っていう風に思っていたんですね。
そんな矢先、あるご主人の介護をしてる方から「先生、ありがとうございます。先生が一週間に一回来てくださってゼリーを食べさせてくれる。それだけが主人の生きる喜びなんです」と言われたのです。
この言葉にはガツーンとやられました。
僕が患者さん宅に行って「○○さん、いいですね。食べてますね。元気ですか。じゃあ、頭挙げてみますよ。大丈夫ですかー。口からリラックスしてください。これはお食事ですよ。よく見てくださいね。はい、食べてください。はい、口を開けてください。口を閉じてください。はい飲んで・・・」みたいなことをやる訳です。
この一連の流れを「じゃあ訪問看護師さん、お願いします!」と言ったところで いやいや、無理ですよと。
僕が患者さんのお宅に行ったらその患者さんが食べられる。しかし、歯科医が行かないと食べられないというのは、生活でもなんでもありません。
歯科だけでできることに限界を感じ、そこで初めて“多職種で食べることを支える”ということを考えるようになったんです。
五島先生がどのように他職種との連携を模索したかについては、次の記事にて!
1)引田克彦, 米山武義, 太田昌子ほか著:プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアを受けた高齢者の咽頭細菌数の変動. 日本老年医学会雑誌 1997;34:125-129.
2)米山武義, 鴨田博司:口腔ケアと誤嚥性肺炎予防.老年歯科医学 2001;16(1)3-13.
[…] 前回の記事はその講演内容の前編として、訪問歯科のはじまりについてまとめましたが、本記事は、その講演内容の後編として、多職種連携の必要性からどのように組織作りを行ったか、また、地域で食支援を行うためには何が必要かについてまとめました。 […]