介護の未来が見えない…そんな現状を打ち破る『未来をつくるkaigoカフェ』レポート

介護職に疲れていませんか?

日本の高齢化が高まる中、介護職の重要性はますます高まっていますが、その一方で、介護人材不足は深刻化し、最低限の人員で業務をまわすことで精一杯という現状があります。

利用者からの「ありがとう」という感謝の言葉に介護のやりがいを感じ、“もっと利用者さんの役に立ちたい!”と思う反面、“この仕事を改善できるのか?”、“この仕事を続けられるのか?”“この仕事を続けていった自分の未来は本当にハッピーなのだろうか”といった不安をもつ介護職の方も多いのではないでしょうか。

不安を感じてもどうすればいいかわからず、日々の業務のモチベーションを上げられずにいたり、職場では誰にも相談できず、行き詰まりや孤独感を感じたり・・・。

前向きな思いを持っていても、身近に共感して貰える仲間に恵まれるとは限りません。
同じ悩みや不安を共有でき、様々な年代、職種、業種を問わず、これからのビジョンを模索する仲間作りができるのが、『未来をつくるkaigoカフェ』です。

職場以外で、自分たちの仕事を語り合う!

職場や業界の問題は、自宅と職場の往復だけの日常では、なかなか突破口が見えないもの。

『未来をつくるkaigoカフェ』は、医療・介護・福祉について、職種や職場を超えて自由に対話ができる場として、2012年7月より高瀬 比左子(たかせ ひさこ/介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員)さんが開催しているカフェコミュニティイベントです。

毎回、語り合うテーマを掲げ、プレゼンテーターが自分の意見を発表し、参加者みんなで意見を交換するイベントで、このイベントをきっかけに、多くの医療・介護・福祉職の方々が日常業務のヒントや刺激をもらい、また、交流会を通じて新たな繋がりを築いています。

今回参加した2018年1月29日に行われた『未来をつくるkaigoカフェ』では、『未来をつくるkaigoカフェ』を支えるメンバーの一人である佐々木淳さん(医療法人社団悠翔会 診療部長/理事長)、下河原忠道さん(株式会社シルバーウッド代表取締役)、そして高瀬さんが、『2017年の活動を振り返る』をテーマに語りました。

写真:近藤浩紀

佐々木 淳さんの2017年

佐々木 淳さんは、区役所を借りて地域住民を巻き込みながら在宅医療の重要性を訴えた『医療&介護カフェAdachi 区民フォーラム2017』の取り組みや、英 裕雄先生(新宿ヒロクリニック 院長)などと立ち上げた『在宅医療政治連盟』、佐藤伸彦先生(ものがたり診療所所長、医療法人社団ナラティブホーム理事長)が主催する『ものがたり合宿』や、秋山和宏先生(一般社団法人チーム医療フォーラム 代表理事)が主催する栄養イベント『WAVES Cafe』への参加、Ageing Asia Inovetionでの在宅分野での受賞、秋山正子先生が所長を務める『マギーズ東京』のほか、北海道・青森・岩手や台湾などへの視察など、自身の活動を振り返りました。

また、2017年5月には、消化器がんや栄養分野で活躍され、がん患者にとっての安らぎの場となる『元ちゃんハウス』を設立した西村元一先生(金沢赤十字病院副院長)や、財政破綻した夕張市の医療再建に尽力された村上智彦先生(NPO法人ささえる医療研究所理事長)が急逝されたことに触れ、哀悼の意を表しました。

これらを振り返りながら佐々木さんは、今後の5つの方向性を示しました。

1.“つながる”ことの重要性

「一人では仕事ができないですし、一人では生きていけない。しかし、例えその人の肉体が滅んだとしても、その人の魂は生き続けますよね。その意味ではつながるということ大事なことですよね」と語りました。

2.リバースイノベーション

台湾や上海での視察について、一見遅れていると思われるアジアでは、制度やお金や専門職の人手がないながらも、医療を実現できている面があり、日本にとって学ぶべきところが多いと、その意図や意義について触れました。

3.政治への発信

「政治は好きではない」としながらも、医療や介護の現場の声を国へ届ける活動の重要性を認識し、その繋がりができたので要望を届けて行きたいと語りました。

4.パブリック(公共)

病院経営者として、自分たちの収入源は公金であり、自分たちの仕事はいわば公共事業であるという視点から、適切な医療・介護を実施しなければ医療費や介護保険料の無駄遣いとなり、国民である自分たちの負担増につながることを述べました。

5.食と栄養

自身の医師としての方向性として、食と栄養に軸足をおきたいと述べました。

次のプレゼンターは、下河原忠道さんです。

下河原忠道さんの2017年

はじめに下河原さんは、村上智彦先生が2017年5月に亡くなられたことに触れ、「私が銀木犀という介護施設を運営していく上で大切なことはすべて村上先生に教えていただいた」と述べました。

枝葉に分かれたビジネスが花を開く

次に下河原さんは、自身の会社、株式会社シルバーウッドでの取り組みとして、鋼材を高齢者住宅に販売するところから事業が始まり、そこから高齢者住宅事業や、そこに住む高齢者が抱えるような認知症への取り組みとしてVR認知症事業へと展開していることに触れました。

「柱となる事業がきちっとあって、そこから枝葉となるビジネスが分かれるととても良い。まったく関係ない領域にいきなり飛んでいくよりかは、自分が得意としている分野から派生していく事業を大切にしたほうがいいですね」

高齢者住宅『銀木犀(ギンモクセイ)』について

シルバーウッドの高齢者住宅は2017年に10棟になり、念願だった千葉県柏市にも完成。こちらは佐々木淳先生が直接診療を担当するとのこと。銀木犀での介護の様子を動画で紹介されました。

出典:銀木犀<柏>ブログ

出典:銀木犀<柏>ブログ

また、厚労省より発表されたサービス付き高齢者住宅の 整備事業での資料で、地域交流施設のイメージ、モデルケースとして銀木犀の駄菓子屋の写真が取り上げられたことを紹介しました。

出典:一般社団法人高齢者住宅推進機構

『VR認知症』について

法人医療法人や介護施設などを対象に参加者が12000人を突破したVR認知症は、アジア太平洋高齢者ケア・イノベーションアワードで「BEST SMART CARE TECHNOLOGY-SERVICE部門」最優秀賞を受賞し、ジャパンタイムズやイギリスのフィナンシャル・タイムズなど海外からの取材も多く、内閣府からも問い合わせがある人気のプロジェクトです。

下河原さんがVR関連の取材を多く受ける理由として、メキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ氏によるVR体験『Carney Arena』がアカデミー監督賞を受賞したことを紹介。

本作品はメキシコ人がアメリカに不法入国する人の視点で描かれた作品で、社会課題を解決するために今まで共有できなかった視点を共有する、アングルシフトをするという点が新しく、同様に、自身の事業のなかでもVRを通じて認知症や統合失調症などの社会問題、とりわけ看取りについてなどを、別の視点でものを考えるダイバーシティ=多様性の観点から届けていきたいと語りました。

また、医療・介護領域こそ多様性が必要で、医療・介護に関係がない職種の人々と一緒になっていくことで新しいことが生まれていくと結びました。

ゲストプレゼンター

二人の演者による発表が終わったところで会場から、簗瀬 寛さん(株式会社GOBOU/鍼灸師)から介護予防の体操について、山崎 史香さん(介護福祉士)から高齢者介護の魅力について、尾藤 陽子さん(練馬ごちゃまぜ食堂 代表)から介護のビジネスとしての事業継続性、鐵 宏之さん(大樹ケアプランセンター新座ケアマネジャー/NCN(にいざケアマネジャーネットワーク)代表)からケアマネージャーの課題、鈴木 貴達さん(視覚障害者の同行援護・ガイドヘルパー派遣otomo代表)から視覚障害者へのサポートについて発表されました。

すべての発表が終わった後はみなさんと交流会が開催され、新しい仲間との出会いを喜びました。

高瀬さん

カフェは公開イベントとして広く誰でも来てもらえる企画も定期的に開催しています。 またこのカフェ開催日より2018年3月末まで「地域で居場所づくりができるケア職の輪を広げたい」というテーマでクラウドファンディングに挑戦しています。皆さまのお力をお借りして実現できたらと思っています。ぜひカフェコミュニティの広がりを応援して頂けたら嬉しいです。詳細、ご支援はこちらからお願いします。
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