時間・言葉遣いは大丈夫?訪問看護における接遇・マナーとケアの難しさとは

執筆者
川上加奈子
川上加奈子
よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

麻布大学臨床検査技師コース卒業後、東邦大学医療短期大学看護科入学。東邦大学医療センター大森病院でNICUを経験後、横浜旭中央総合病院で外来にて抗がん剤治療などを担当。2012年より訪問看護に従事。2016年より現職。

利用者・患者宅へ訪問する際の接遇・マナーを考える

学生の頃から接遇・マナーについては皆さん勉強されてきているとは思いますが、訪問看護はまさにそれが試される場でもあります。

もちろん病院でも在宅でも気をつけるべき接遇・マナーは同じなのですが、一つ大きく違うのは、周囲の目があるかないかの違いです。

「誰かが見ているからしっかり仕事をしなきゃ」と思いながら看護の仕事をされている人は少ないとは思いますが、訪問看護では、ご自宅に繰り返し伺うことで関係性が密になることから利用者とナアナアな関係になりやすいのも事実だからです。

以下いくつかの事例で紹介しましょう。

患者・利用者宅への訪問時間は遅刻しても平気?

例えば訪問時間。

利用者から「うちはずっと家にいるんだから来てくれるなら何時でもいい。よっぽどでなければ、遅れる連絡も要らないよ」と言われたとします。

それを鵜呑みにしないまでも、その好意に甘えると、心のどこかに「あそこは遅れても大丈夫な家」とインプットされ、いつのまにか多少遅れることも気にならなくなってしまうこともあるでしょう。

しかし、それは同時に利用者から「あの看護師は時間にルーズな人」という見方をされてしまう可能性もあるのです。

当たり前のことですが、社会人としてやむを得ない交通事情は別として、『訪問時間はしっかり守る』『ケアの提供時間もしっかり時間一杯こなす』こと、これは最低限の訪問のマナーとだと感じています。

患者・利用者にはどこまで親しい言葉遣いにすべき?

次に、言葉遣い。

これは病院でも在宅でも共通で、親しくなりすぎて敬語が崩れてくるというのはよくあることです。

これに関しては、それを信頼の現われと感じたり、心地よく感じる方もいるかもしれません。

しかし、その一方で、敬語が使えない看護師に嫌悪感を感じる方も多くいらっしゃいます

言葉遣いがナアナアになってくると、関係性もナアナアになりやすいものです。

患者・利用者から物品を頂いても平気?

訪問の際に患者・利用者から、物品を頂くこともあるでしょう。

お菓子、プレゼント、お歳暮、金品・・・と、頂くものがどんどんエスカレートし、気がついた時にはどうにも断りきれない状況に陥ってしまう危険性もあります。

すべてを一律でお断りするのも簡単ですが、実際訪問に行っていると金品などを受け取らないと本気で怒り出す利用者も少なからずいらっしゃるのも事実。

そのような時は、基本的には繰り返し説明し「お気持ちだけで」と断りますが、どうにも納得していただけない場合は、受け取ったふりをして後からそっと家族にお返しすることも一つの手段としています。

いずれにせよ、そこまで大変なことにならないよう、はじめからしっかり一線を引くことが大切なのは言うまでもありません。

この他にも、『訪問時に靴を揃える』『訪問鞄はたくさんの家に持ち歩いているため、綺麗なものではないという認識のもと、荷物を置かせていただく場所にも気遣う』など、細かいことを言い出したらきりがありません。

ケアの場には自分しかいないからこそ

訪問看護は担当制のことが多いため、『多くの看護師で統一したケアをしなければならない』ということは必ずしもありません。

つまりそれは、自分の工夫次第でより充実したケア内容に変更することができるということでもあり、それが訪問看護の醍醐味でもあります。

しかし、裏を返せば自分しか訪問にいかないため、客観的にケアを評価されることもないといえます。

悪く言えば、時間いっぱいケアをしても、おしゃべりをしながら何となくケアをしても、時代遅れのケアをしたとしても初めて訪問看護を受ける患者・利用者は「こういうものなんだろう」と疑問すら持たないことでしょう。

訪問看護は第三者の目がない分、自分で自分を律することができないと、接遇・マナーにせよケアの質にせよ、業務に甘えが生じて楽な方に流されてしまう危険性があります。

そのため、意識して研修に参加するなどして自分のケアを見直さないと、医療の進歩に取り残されたままのケアとなり、患者・利用者の不利益となってしまうリスクもあります。

訪問看護は本当にやり甲斐がある仕事だと常々感じていますが、より良いケアを提供する為には自分自身を客観的に評価し、日々切磋琢磨をしていかねばならない仕事だとも感じています。

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