【第34回(2020年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問86応用「日本人の食事摂取基準(2015年版)における推定平均必要量(EAR)」

34-086 日本人の食事摂取基準(2015年版)における、成人の推定平均必要量(EAR)の策定根拠に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

(1)ビタミンB1は、尿中にビタミンB1の排泄量が増大し始める摂取量から算定された。
(2)ナイアシンは、尿中にナイアシン代謝産物の排泄量が増大し始める摂取量から算定された。
(3)ビタミンCは、壊血病を予防できる摂取量から算定された。
(4)カルシウムは、骨粗鬆症を予防できる摂取量から算定された。
(5)鉄は、出納試験で平衡状態を維持できる摂取量から算定された。

正解:1

【解説】

推定平均必要量(EAR)の問題は、基本中の基本です。
国試でも必ず出題されるので、目標量や目安量、耐用上限量などの各指標とセットで必ず覚えましょう。

1=○:ビタミンB1をはじめとする水溶性ビタミンの推定平均必要量(EAR)は、尿中への排泄量が増大し始める摂取量から算定されているため、正しい記述です。

ビタミンB1・B2・B6・B12などの水溶性ビタミンは、必要量を満たすまではほとんど尿中に排泄されず、必要量を超えると急激に尿中排泄量が増大することから、尿中に水溶性ビタミンの排泄量増大した際の摂取量を推定平均必要量(EAR)に算定されています。

2=×:ナイアシンの推定平均必要量(EAR)は、ナイアシン欠乏によりペラグラ様症状を引き起こさない量としているため、誤った選択肢です。

ナイアシンとは、ニコチン酸とニコチンアミドの総称で、ヌクレオチド (NAD) やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換される水溶性ビタミンです。

NADに変換されるということは、ナイアシンはATP合成=エネルギー産生に関与しているということです。

したがって、ナイアシンの推定平均必要量(EAR)は、エネルギー摂取量に応じた形で設定されます。

また、ナイアシンが不足すると、ペラグラ様症状を引き起こすため、推定平均必要量(EAR)は、ペラグラ様症状が発生しない必要量として算定されています。

3=×:ビタミンCの推定平均必要量(EAR)は、心臓血管系疾患が予防できる摂取量から算定されているため、誤った選択肢です。

確かにビタミンC不足により壊血病が発症しますが、同様にビタミンC摂取により心臓血管系疾患を予防する効果もあります。

壊血病の発症を予防するビタミンC摂取量よりも、心臓血管系疾患の発症を予防するビタミンC摂取量の方が摂取量が多いため、両疾患の予防を目的に、ビタミンC摂取量が多い心臓血管系疾患の発症を予防する量を推定平均必要量(EAR)としています。

4=×:カルシウムの推定平均必要量(EAR)は、疾患予防のためではなく、年齢や体重などから要因加算法により算定されているため、誤った選択肢です。

カルシウムと生活習慣病の関連についてはいくつか報告があるものの、エビデンスとして不十分なため、疾患予防を目的として推定平均必要量(EAR)を設定していません。

5=×:鉄の推定平均必要量(EAR)は、年齢や体重などから要因加算法により算定されているため、誤った選択肢です。

なお、上記の考えは、日本人の食事摂取基準の2015年版も2020年版も変わりません。

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