32-033 ホルモンと内分泌疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)バソプレシンは、水の再吸収を抑制する。
(2)成長ホルモンは、下垂体後葉から分泌される。
(3)バセドウ病では、徐脈がみられる。
(4)原発性アルドステロン症は、高カリウム血症を起こす。
(5)褐色細胞腫は、高血圧を起こす。
正解:5
【解説】
1=×:バソプレシンは、水の再吸収を促進するため、誤った選択肢です。
バソプレシンとは脳の視床下部で合成され、下垂体の後葉から分泌される抗利尿ホルモンです。
バソプレシンは、腎臓に作用することで尿細管で尿となる水分の再吸収を促進する作用があります。利尿(尿の排出)とは逆に尿の水分を減らすので、抗利尿という訳です。
2=×:成長ホルモンは、下垂体前葉から分泌されるため、誤った選択肢です。
下垂体には前葉と後葉があり、下垂体前葉は腺細胞でできています。したがって、前葉はホルモンを産生して分泌する組織であり、成長ホルモン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモンなど多くのホルモンが前葉から産生・分泌されます。
一方、下垂体後葉は神経細胞でできているため、ホルモンを産生する機能はありません。
視床下部にある神経分泌細胞からバソプレシンとオキシトシンが産生され、そのまま神経細胞の軸索を通じて下垂体後葉で分泌されます。
したがって、バソプレシンとオキシトシンだけが視床下部で産生され、下垂体後葉で分泌されるホルモンです。
3=×:バセドウ病では、頻脈がみられるため、誤った選択肢です。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とは、自己免疫の異常により自己抗体が甲状腺を刺激することで、過剰に甲状腺ホルモン(T3、T4)を産生・分泌させてしまう免疫・代謝疾患です。
甲状腺ホルモン(T3、T4)は身体の代謝を促すホルモンであるため、甲状腺ホルモンが過剰となると代謝=エネルギー消費が高まります。
エネルギーを全身に送るために、心臓の拍出は多くなるため、頻脈となります。
4=×:原発性アルドステロン症では、低カリウム血症がみられるため、誤った選択肢です。
アルドステロンは、昇圧物質であるアンジオテンシンⅡが代謝されて生じる昇圧ホルモンです。
アルドステロンはナトリウムを体内にとどめると同時にはカリウムを排出する働きがあり、これにより循環血液量を増やして血圧を高めます。
したがって、原発性アルドステロン症では、低カリウム血症となります。
ナトリウムとカリウムは電解質バランスを調整するうえで、両者はシーソーの関係にあることを理解しておくとよいでしょう。
5=○:褐色細胞腫は、高血圧を起こすため、正しい記述です。
褐色細胞腫とは、副腎髄質に発生する腫瘍です。
カテコールアミンを分泌する副腎髄質に褐色細胞腫ができることで、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)が過剰に分泌されます。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)は交感神経に働きかけるホルモンなので、褐色細胞腫により交感神経が過剰に優位になり、身体中の血管を収縮させて高血圧となったり、代謝亢進により頻脈ややせ、頭痛などを引き起こします。
また、血糖をさげるホルモンであるインスリンに対して、血糖を上げるホルモンとして、成長ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)、副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)、甲状腺ホルモン、グルカゴン、ソマトスタチンなどがあり、多くのホルモンは高血糖にはたらきます。
つまり、ホルモンの分泌が高まると、高血糖に傾きます。
したがって、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)を過剰に分泌する褐色細胞腫では高血糖がみられます。
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