【第33回(2019年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問142臨床「褥瘡の栄養管理」

33-142 褥瘡に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)大転子部は、好発部位である。
(2)貧血は、内的因子である。
(3)十分なたんぱく質の摂取量が必要である。
(4)亜鉛の摂取量を制限する。
(5)30度側臥位は、予防となる。

正解:4

【解説】

褥瘡とは、寝たきりなどにより体重で圧迫されている部位で血流が悪くなることで、皮膚の一部が炎症を起こしたり、傷ついたり、壊死する症状です。一般的には「床ずれ」ともいわれます。

日本褥瘡学会の調査によれば、2016年における一般病院での褥瘡発生率は約2.5%、大学病院で約1.6%だそうで、ほとんど発生を予防できている状況です。

しかし、病院外での褥瘡発生は根絶できていません。

1=○:大転子部は褥瘡の好発部位であるため、正しい記述です。

褥瘡は、寝たきりなどの体勢で持続的な圧力が一点にかかると発生リスクが高まります

そのため、寝ている体勢で力がかかる部位=骨などが出っ張っている部位が褥瘡がよく発生します。

大転子部(だいてんしぶ)とは、脚の付け根の外側の骨がある部位です。
平たく言うと、大転子部とは太ももの上の方です

横になって寝ると大転子部が床について自重を支えて圧力を受けるので、褥瘡が好発します。

2=○:貧血は褥瘡の内的因子であるため、正しい記述です。

褥瘡が発生する要因には大きく、内的因子と外的因子が考えられます。

外的因子とは、身体の外側からの要因です。
具体的には、身体に垂直に作用する圧力(体圧)に対して圧縮される力や、身体と身体の支持面の間の摩擦・ずれによって生じる引っ張る応力・せん断力などです。

一方、内的因子とは、身体の内側の要因です。
具体的には、加齢、低栄養、麻痺、貧血、血流障害などです。

体圧や応力、せん断力が加わるだけではなく、貧血や血行障害により血液からの栄養が足りなかったり極度に皮膚が湿潤・乾燥することで皮膚が弱くなっていたりすることが加わると、褥瘡は発生します。

3=○:褥瘡では十分なたんぱく質の摂取量が必要であるため、正しい記述です。

褥瘡では皮膚が損傷するため、皮膚を形成(上皮化)するためにたんぱく質を必要とします。

4=×:褥瘡治療では亜鉛の摂取が推奨されているため、誤った選択肢です。

亜鉛は体たんぱくの合成に必要な栄養です。

日本褥瘡学会編『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、褥瘡発生後の全身管理において、

亜鉛、アスコルビン酸、アルギニン、L-カルノシン、n-3系脂肪酸、コラーゲン加水分解物など疾患を考慮したうえで補給してもよい。(CQ4.9)

とされています。

5=○:30度側臥位は褥瘡予防となるため、正しい記述です。

30度側臥位とは、横向きになった時に、ちょっぴり身体の体重を片方にかけて、おしり(臀部)を浮かせるような体勢のことです。

30度側臥位は、骨の突出のない殿部の筋肉で体重を支えることができ、さらにベッドとの接触面も広いために体圧を分散させることができるため、褥瘡予防に有効な姿勢とされています。

日本褥瘡学会編『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』でも、

30度側臥位、90度側臥位ともに行うよう勧められる。(CQ9.3)

とされています。


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