【第33回(2019年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問127臨床「腸疾患の栄養管理」

33-127 腸疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

(1)潰瘍性大腸炎では、白血球数の低下がみられる。
(2)クローン病では、チャイルド分類で重症度を評価する。
(3)イレウスでは、経腸栄養法を選択する。
(4)たんぱく漏出性胃腸症では、高たんぱく質食とする。
(5)過敏性腸症候群では、抗TNF-α抗体製剤が用いられる。

正解:4

【解説】
(1)×:潰瘍性大腸炎では、白血球数の増加がみられる。
潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の一つで、大腸において原因不明の炎症がみられる原因不明の難病(特定疾患)です。

免疫異常により自分の大腸が異物と認識されて炎症が生じているため、白血球数やCRP値などの炎症を示す検査値が一般的に上昇します。上昇しないまでも、炎症時には白血球数は低下しません。

(2)×:クローン病では、IOIBDスコアで重症度を評価する。
クローン病は、炎症性腸疾患の一つです。
同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎が大腸に炎症が限られているのに対して、クローン病は消化管全体に炎症がみられる原因不明の難病(特定疾患)です。

クローン病の臨床評価は、10項目の診断箇所から成るIOIBDスコアが用いられます。

チャイルド分類(もしくはChild-Pugh分類;チャイルド・ピュー分類)は、肝硬変での重症度分類に用いる分類です。肝臓の機能の低下(≒線維化)の度合いを、腹水や脳症、血清アルブミン値などから評価するものです。

(3)×:イレウスでは、経腸栄養法は禁忌である。
イレウス(腸閉塞)では、腸管が閉塞しているため腸管機能が使えません。
したがって、イレウスにおいては経腸栄養法は適応とならないだけではなく、消化物が腸から肛門へ排泄されないため、腹部膨満感や逆流、悪心・嘔吐を招くため、禁忌です。

(4)○:たんぱく漏出性胃腸症では、高たんぱく質食とする。
たんぱく漏出性胃腸症は、血漿たんぱく質(≒アルブミン)が胃腸から漏出する疾患です。

胃腸からの栄養の消化・吸収が低下するため、たんぱく漏出性胃腸症ではカルシウムをはじめとした栄養の制限はほとんど行いません
むしろ、漏出で失われるたんぱく質は積極的に摂取する必要があり、それに伴ってエネルギー摂取量も増やす必要があります。

ただし、脂質の消化・吸収は腸管に負担をかけるため、脂質のみ低脂肪(30~40g/日)とするとされています。

(5)×:過敏性腸症候群では、抗TNF-α抗体製剤が用いられない。
過敏性腸症候群(IBS)は、主にストレスを原因にした消化管運動の異常による症状を生じる疾患です。
症状としては、下痢や便秘、腹痛などのほか、頭痛や疲労感などの消化管症状以外もみられます。

抗TNF-α抗体製剤は、TNF-αという免疫物質(炎症性サイトカイン)を抑制する免疫抑制剤であり、免疫異常で生じる炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)での治療薬として用いられます。

過敏性腸症候群(IBS)は免疫異常による疾患ではないため、抗TNF-α抗体製剤が用いられません。

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