35-026 先天性代謝異常症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)糖原病Ⅰ型では、高血糖性の昏睡を生じやすい。
(2)フェニルケトン尿症では、チロシンが体内に蓄積する。
(3)ホモシスチン尿症では、シスチンが体内に蓄積する。
(4)メープルシロップ尿症では、分枝アミノ酸の摂取制限が行われる。
(5)ガラクトース血症では、メチオニン除去ミルクが使用される。
正解:4
【解説】
(1)×:糖原病Ⅰ型では、低血糖性の昏睡を生じやすい。
糖原病Ⅰ型とは、糖新生にかかわるグルコース-6-ホスファターゼやその関連酵素が先天的に欠損していることで、グルコースが不足したり、グルコースの蓄積がうまくいかなくなる疾患です。
特に糖原病Ⅰa型では、グルコース-6-ホスファターゼが欠損しているため、グリコーゲンが分解されず肝臓に蓄積したまま、血中へとグルコースが供給されません。したがって、糖原病Ⅰ型では低血糖や肝腫大がみられます。
https://www.shouman.jp/disease/details/08_05_066/
(2)×:フェニルケトン尿症では、フェニルアラニンが体内に蓄積し、チロシンが欠乏する。
フェルニケトン尿症とは、不可欠(必須)アミノ酸の一つであるフェニルアラニンが、酵素による代謝をうけてチロシンとなるはずが、酵素が先天的に欠損しているために代謝されず蓄積し、チロシンが不足する疾患です。
蓄積したフェニルアラニンは、フェニルケトンとなって尿に排泄されます。
チロシンは、ドーパミンやノルアドレナリン、アドレナリンといった神経情報伝達物質の材料となるのでした。
したがって、フェニルケトン尿症では、けいれんなどの神経症状を引き起こします。
(3)×:ホモシスチン尿症では、ホモシステインが体内に蓄積し、その代謝物であるシスチンが欠乏する。
ホモシスチン尿症とは、不可欠(必須)アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝物であるホモシステインが、酵素による代謝をうけてシスタチオニンを経てシスチンになるはずが、酵素が先天的に欠損しているために蓄積し、シスチンが不足する疾患です。
シスチン不足よりも、ホモシステインの過剰な蓄積により知能障害や精神症状などを引き起こすことが重篤です。
(4)○:メープルシロップ尿症では、分枝アミノ酸の摂取制限が行われる。
メープルシロップ尿症とは、分枝アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が、酵素が先天的に欠損しているために分子ケト酸となって蓄積する疾患です。
分子ケト酸は、高濃度となると脳神経細胞の発達を抑制したり、中枢神経障害などを引き起こします。
臨床栄養学では、大抵の疾患で分枝アミノ酸の摂取が推奨されますが、メープルシロップ尿症だけは分枝アミノ酸の摂取NGです。
なお、メープルシロップ尿とは、分枝ケト酸から生じたα-ケト酸が尿に排泄された際、α-ケト酸に由来したメープルシロップのような匂いがする尿のことです。
(5)×:ガラクトース血症では、ラクトース除去ミルクが使用される。
ガラクトース血症とは、ガラクトースの酵素が先天的に欠損しているためにガラクトースが蓄積する疾患です。
ガラクトースが蓄積するとガラクチトールが生成されますが、ガラクチトールは水晶体の浸透圧を上昇させるとともに、水晶体を混濁させるため、白内障を生じます。
したがって、ガラクトースが蓄積しないようにする必要がありますが、先天性異常の対応が必要となる新生児ではミルクを摂取するため、ミルクに含まれるラクトース(乳糖)は酵素(ラクトース)によりグルコースとガラクトースの分解されるため、ガラクトース血症では、ラクトースを除去したミルクが必要となります。
同じテーマの問題
【第34回(2020年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問136臨床「先天性代謝異常症の栄養管理」解説内容が良いと思って下さったら、ぜひ下のいいねボタンを押して下さい!いいねを頂けると、解説を書く励みになります。
コメントを残す