【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問33 人体「内分泌疾患」

35-033 内分泌疾患の主な症候に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)クッシング症候群では、テタニーがみられる。
(2)甲状腺機能亢進症では、低体温がみられる。
(3)褐色細胞腫では、低血糖がみられる。
(4)アジソン病では、血中コルチゾールの低下がみられる。
(5)尿崩症では、高張尿がみられる。

正解:4

【解説】
(1)×: クッシング症候群では、高血圧や中心性肥満などがみられる。
テタニーとは、四肢のけいれんなどがみられる神経症状で、電解質の異常では低カルシウム血症の場合に生じます

クッシング症候群は、コルチゾールが過剰に分泌される疾患です。
コルチゾールは、代謝を促進するホルモンで、電解質にもさまざまな作用がありますが、基本的にコルチゾールは代謝を促進するために全身に血液を送る必要が高まって血圧を上昇させるため、降圧効果のあるカリウムの排泄や、昇圧効果のあるナトリウムの再吸収を促進します。

したがって、クッシング症候群では高血圧がみられます

クッシング症候群=コルチゾール過剰では、コルチゾールが腸管からのカルシウム吸収を抑制するため、低カルシウム血症がみられる場合もあるようですが、クッシング症候群の診断基準などでは低カルシウム血症やテタニーがみられることが要件とはなっていません。

機序としては、クッシング症候群によるテタニーの発生はないとはいいきれないかと思われますが、まれであり、『主な症候』とはいえないため、最も適当とはいえず、誤答とされているものと考えられます。

なお、低カルシウム血症やテタニーを引き起こす内分泌疾患は、副甲状腺機能低下症です。

副甲状腺ホルモン(パラソルモン)は、骨から血液中にカルシウムを移動させて、血中カルシウム濃度を高めるホルモンです。
副甲状腺機能低下症では、パラソルモンの分泌が低下するため、血中カルシウム濃度は低下し、テタニーが生じます。

(2)×:甲状腺機能亢進症では、高体温がみられる。
甲状腺機能亢進症では、甲状腺が甲状腺ホルモンを分泌する機能が低下します。

T3トリヨードサイロニン)、T4サイロキシン)などの甲状腺ホルモンは、代謝を促進するホルモンですので、エネルギー消費を促進するため、エネルギー消費による熱産生のため、体温は高まります

(3)×:褐色細胞腫では、高血糖がみられる。
褐色細胞腫とは、副腎髄質にできる腫瘍です。

褐色細胞腫では、副腎髄質から分泌されるカテコールアミン(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン)が腫瘍の影響で過剰に分泌されます

カテコールアミンは、興奮系の情報伝達物質であり、身体の代謝を高めるため、高血圧・高血糖となります

したがって、褐色細胞腫は高血糖となります。

(4)○:アジソン病では、血中コルチゾールの低下がみられる。
アジソン病とは、副腎皮質の機能が低下して、副腎皮質から分泌されるコルチゾールやアルドステロンなどのホルモンの分泌が低下します

これらのホルモンは血圧を高める昇圧ホルモンですので、これらの昇圧ホルモンの分泌が低下するアジソン病では、血中コルチゾールの低下がみられます。結果として、低血圧がみられます。

(5)×:尿崩症では、高張尿がみられる。
尿崩症とは、下垂体後葉から分泌されるバソプレシンの分泌が低下することで、尿の集合管での水の再吸収が障害された結果、浸透圧の低い尿が多量に排泄される疾患です。

尿崩症では、尿細管で血管へ水分が再吸収されずに凝縮が不十分となり、尿として水が多く排泄されるため、尿は水分が多く、尿に溶ける溶質(水分に溶けている物質。ここではナトリウムやカリウムなどの電解質)が少ないため、浸透圧が低い低張尿がみられます。

一方、高張尿がみられる代表的な疾患は、糖尿病です。
尿中に糖(グルコース)が溶質として多く溶けているため、尿の浸透圧は高くなり、高張尿となります。

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