【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問9 社会「がん(乳がん)」

35-009 乳がんに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)わが国の女性の最近5年間の年齢調整死亡率は、胃がんより低い。
(2)授乳は、発症リスクを高める。
(3)主な発症要因として、ウイルス感染がある。
(4)法に基づく市町村事業としての検診では、20歳以上を対象とする。
(5)法に基づく市町村事業としての検診では、マンモグラフィが推奨されている。

正解:5

【解説】

(1)×:わが国の女性の最近5年間の乳がんの年齢調整死亡率は、胃がんより高い。
女性において乳がんと胃がんの死亡率はかなり近い値で、令和2(2020)年の人口動態統計調査では、女性におけるがんの死亡数は、胃がんが14,548人(23.4%)に対して、乳がんが14,650人(23.4%)とわずかに乳がんが高いです。

しかし、令和元(2019)年の人口動態統計がん死亡データでは、女性における部位別死亡数は、胃がんが14,888人に対して、乳がんが14,839人であり、胃がんの方がわずかに高いです。

また、平成28(2016)年の人口動態統計調査では、女性におけるがんの死亡数は、胃がんが15,677人(24.4%)に対して、乳がんが14,015人(21.8%)であり、胃がんの方が年齢調整死亡率が高い状況です。

したがって、最近5年間を見ても、乳がんのほうが死亡率高い年と胃がんが高い年がありますので、正確には解なしの問題と思われます。

出題の主旨としては、胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することで胃がんによる死亡率は低下しているものの、乳がんは早期に発見すれば助かるがんなのに年齢調整死亡率が高いので、がん検診を受けてもらえるようにするのが予防の観点から重要である、というようなことを言いたいのではないかと推察します。

(2)×:授乳は、乳がんの発症リスクを低下させる。
乳がんはエストロゲンの曝露量が多いほど、発症リスクが高まることが知られています。

授乳をすると、エストロゲンやプロラクチンなどの性ホルモンの分泌が抑制されるため、結果として乳がんの発症リスクを低下させます。

したがって、授乳経験のない人が、授乳経験がある人と比べて乳がん発症リスクが高いことは確実です。また、授乳の期間が長いほど乳がん発症リスクが低くなることも確実とされています(日本乳がん学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」)。

(3)×:乳がんの主な発症要因として、肥満・飲酒・喫煙などがある。

(4)×:法に基づく市町村事業としての乳がん検診では、40歳以上を対象とする。
健康増進法を根拠法として、市町村が行う健康増進事業としてがん検診が行われます。

(5)○:法に基づく市町村事業としての検診では、マンモグラフィが推奨されている。
マンモグラフィとは、乳房専用のX線(レントゲン)撮影です。乳房部をレントゲン撮影することで、病変部を描き、乳がんの早期発見に活用します。

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