ますます増える独居高齢者
核家族化が進み、昔よりも独居の高齢者が確実に増えてきています。
独居と一言で言っても、家族のサポートのある独居の方と、全く頼れる人がいない独居の方とでは在宅でのアプローチの仕方は大きく変わってきます。
そこで今回は家族のサポートを期待できない方の事例でのアプローチを考えていきたいと思います。
事例;週2回で訪問看護が入り、ヘルパーも週2回入っている要介護2の独居高齢者
外出は10分位ならば杖で歩行可能。通院は介護タクシーを利用。軽度の認知機能の低下はあり、予定などはカレンダーに書いておかないと覚えていられない。よく物を探している。
息子は一人いるが遠方に住まわれており、疎遠であり、介護の協力は得られない。
訪問看護によるアプローチ
さて、この段階での訪問看護の役割はどこまで考えれば良いでしょうか。
身体的な面からのアプローチとしては、まずは病状の管理になります。
病状の管理
- 人工肛門からの便の破棄はちゃんとできているか?→困難ならヘルパーへ依頼する。
- 便が漏れた時の対策→患者・利用者が訪問看護ステーションに連絡できるよう、連絡先を大きく紙に書いて壁に貼り、携帯の短縮ダイヤルに登録する。
- 内服管理はできているか?→患者・利用者が一人でも確実に服薬できるようにする工夫、訪問薬剤師の介入を検討する。
- 身体保清はできているか?→週に一回のデイサービスの入浴だけでは足りないため、ヘルパーでの保清、あるいは訪問看護でのパウチ交換に合わせた入浴介助を検討する。
- 通院は問題ないか?→介護タクシーで一人で病院に行けたとしても、医師からの診察結果や治療方針をしっかり聞けていない場合もあるため、それをサポートする対応を検討する。
この5番の「一人での通院で何が問題になってくるのか」について補足説明をすると、例えば、浮腫が強くなり臨時受診を促し、その結果、利尿剤がAからBに変更になったとします。
しかし、医師からの説明がよく聞こえず空返事で帰宅された場合、利尿剤Aを中止にせず、利尿剤Aに重ねて利尿剤Bを飲まれてしまい、薬の効果や副作用が強く出てしまうようなリスクもあるからです。
そのため、その様な方の受診にはケアマネジャーと相談して、受診時にヘルパーを同行にするか、あるいは医療機関と訪問看護師が連携して情報交換をタイムリーに得られるようサポートしていくことが大切となります。
身体的な面以外の管理
さて、この方にあと足りない物は何でしょうか?
それは地域との繋がりです。
地域の集会所では民生委員や地域包括支援センターが協力して定期的に開催しているお茶会等を開いているところも多いので、参加を促すのも効果的だと思います。
何故ならばこの様な地域の集まりに患者・利用者が参加することは、患者・利用者本人が地域から孤立することを防ぐ大きな力になるからです。
もし本人が、そのような集いに参加したくないという場合は、民生委員に独居で疾患を持ちながら生活していることを伝えるだけでも良いと思われます。
そうすることは震災の時など気にしてもらえる存在となっていくからです。
その他に、これは訪問看護のサービスではありませんが、知っておきたい成年後見制度というものがあります。
これは独居の方で身寄りもなく、認知機能の低下も始まりお金の管理やサービスの契約などもできなくなってきた場合に利用できる制度です。
この「判断能力が不十分な方々を法律面や生活面で保護し支援する制度」はこれからの独居高齢者の生活をサポートしていく上で益々重要になってくることでしょう。
夜間・緊急時の対応について
最後に、夜間の対応については24時間対応の訪問看護ステーションを選択するというのもありますが、この他に、定期巡回型、随時対応型訪問介護看護を導入することで独居高齢者の生活をバランスよくサポートするという方法もあります。
こちらは訪問介護と訪問看護が連携し1日に複数回対応が利用できるサービスです。
このサービスは24時間対応もあり、更には臨時で複数回訪問が入っても定額なため、失禁してしまった、転倒してしまった、急に熱が出て不安…など、細かい要望にも柔軟に対応でき、心強いサービスでもあります。
しかしその反面、状態が落ち着いている方で複数回の訪問を希望されない場合はかえって割高なサービスになってしまうというデメリットもあります。
このように、独居の高齢者を支えるサポートは色んな形ができてきています。
きっとこれから更に色々工夫された地域からのサポートなども増えてくることでしょう。
そんな中、私達医療スタッフも自分の仕事だけではなく、その周りにある様々なサービスがあることも勉強し、ケアマネジャーと共に患者・利用者にとってより良いサービスを提案していくことが大切になってくると感じています。
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