一人で患者・利用者の自宅に行くのが怖い!?
訪問看護は患者・利用者のプライベートゾーンであるご自宅に一人で訪問します。
患者・利用者のプライベートゾーンに入るということはそれだけ患者やご家族との距離が近くなるというメリットがある反面、深く関わり過ぎてしまう危険性もあるということになります。
医療・介護提供者にはそのつもりがなくても、患者・利用者の親近感や依存心を高めすぎてしまい、結果として、自分に好意を持ってると思わせてしまったり、セクハラ行為が起きやすい状況が形成されてしまうケースもあるようです。
前回の記事ではパワハラを取り上げましたが、今回は、患者・利用者からの一方的なセクハラ行為やその対策の紹介ではなく、看護師自らが知らず知らずの内に招いてしまっている「セクハラ行為が起きやすい状況」についてご紹介したいと思います。
事例1:信頼構築のためのタッチングが…
これは私の昔の体験ですが、初回訪問時に利用者へ安心・安楽を提供して信頼関係をつくるために、「これから一緒に頑張りましょうね」と手を差し出して、利用者の目を見てしっかり握手をしました。
すると、あとで他の看護師から、利用者が「あの看護師さん、いきなり手を握ってきたんだよ。びっくりしてさ。多分俺に気があると思う。あれからドキドキして意識しちゃうよ」と話されていたと聞くことがありました。
私はもともと帰国子女でスキンシップが何気なく出やすいため注意していたつもりでしたが、握手や“手当て”までもが恋愛を意識した行為にとられてしまうこともあるのだとびっくりしたケースでした。
しかし、こと、スキンシップに慣れていない日本人の高齢者にとっては、初対面での握手は人によっては戸惑わせてしまったり、不快に感じさせてしまうかもしれないとも反省したのでした。
また、視線についても、慣れないうちから患者・利用者の眼を真っ直ぐ見つめてしまうと、事例のような誤解を与えたり、逆に緊張感や威圧感を与えてしまう可能性もあるため、看護師の一つひとつの立ち振る舞いも意識して動かなければならないと感じています。
事例2:利用者へのリハビリ指導での距離感と服装が…
これはまた違うケースですが、普段無口で紳士的な利用者さん。セクハラとは縁遠いと思っていた方でしたが、一緒に並んで四つん這いになってリハビリ指導をしていたら、急に襲われそうになったこともありました。
これに関しては、室内が狭かったというのもありますが、シンプルに利用者との距離が近すぎたことと、夏場でTシャツにハーフパンツで自分の露出度が高かったことが原因かと感じています。
かといって夏場でも長袖長ズボンという訳にはいかないので、訪問着を選ぶ時は、「かがんだ時にも胸元が見えにくいか」「汗をかいた時に透けないか」なども視点に入れて選ばなければなりません。
そして、リハビリを行う際には、向き合ったり並んだりするよりも、なるべく後ろからサポートする形で実施することも場合によっては必要だとも感じています。
“疑似恋愛”を招かないための利用者との距離
患者・利用者が、精神的にも体力的にも病気で弱っている状態で優しくケアをされたならば、依存心や好意をもつのは自然な流れかもしれません。
その想いは感謝の気持ちからくるものが本来の形だと思われますが、人によっては疑似恋愛の様な感情を抱かせてしまう危険性もあります。
だからこそ訪問看護師はそのような誤解をしっかり認識し、あらかじめ一線を引いておくことが重要になってくるのです。
セクハラやパワハラを医療者が我慢する必要は全くありませんが、相手を批判する前に、そういう状況は何故起こってしまったのか?
自分の行動にも問題がなかったのか?など、自らの身だしなみや態度、言葉遣いを改めて見直すことも大切だと思っています。
握手にしてもリハビリにしても、病院という空間で行うのと、密室である自宅で行うのとでは、親密度が全く違うということを忘れずに日々のケアを実施していかねばならないと感じています。
最後に、セクハラに遭遇した時の具体的な対策については前回ご紹介したパワハラ事例の対策とほぼ重なる為改めての執筆はここでは省きますが、管理者に速やかに報告をして早期に対応を検討していくことが基本であることは言うまでもないでしょう。
訪問時にセクハラを招かないポイント
セクハラ行為はもちろん行う側に否がありますが、セクハラを招かないよう、医療・介護提供者側が以下のような工夫することが効果的です。
・服装:露出の高いものや、身体のラインがくっきりでる服装は避ける。動いた時も含めて胸元が見えにくく、水に濡れても透けない服装が望ましい。
・外見:化粧は控えめにし、髪型もなるべく清楚な感じでまとめる。また、タバコや香水の臭いに反応して気分が悪くなる患者・利用者も実際にいるために注意が必要。
・言動・接し方:親しくなっても、患者・利用者―医療・介護提供者という立場を忘れずに、敬語が基本。話す時の視線や距離・内容は状況により異なるが、相手のプライベートゾーンに入っていることを認識し、一定の距離を保つよう心がける。
・タッチング・スキンシップ:“手当て”は大切なケアの一つであるが、誤解を招かないよう不必要なタッチングは避ける。
ケアを行ううえでは、患者・利用者との間に誤解を生まないよう工夫することも大切です。
まずは自分ができることからはじめてみましょう。
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