在宅での看取るための看護や家族ケアと意思決定支援のコツ

執筆者
川上加奈子
川上加奈子
よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

麻布大学臨床検査技師コース卒業後、東邦大学医療短期大学看護科入学。東邦大学医療センター大森病院でNICUを経験後、横浜旭中央総合病院で外来にて抗がん剤治療などを担当。2012年より訪問看護に従事。2016年より現職。

本人とご家族の看取りのスタイルを把握する

訪問看護での看取りを行う際、私が大切にしていることで、まず1番に思いつくことは、「人生の終え方に対する家族と本人の想い」です。

本人や家族が望む人生の終え方、ゴールについて、きちんと把握しなければ適切なケアを提供できないので、まずは、本人も家族も、本当に“自宅で最期を迎えたい”と思っているのか、それとも“いよいよ辛くなってきたら病院に戻りたい”と思っているのか?ということをはじめにしっかり確認しておくことが大事だと思っています。

ご家族ももちろん人間ですから、はじめは看取りをするつもりだったけれど、「こんな辛そうなのは見ていられないから入院させて下さい」と変化するパターンもあり、それはそれでいいと思います。

ただ、ある程度看取りをするならば、ご家族には“それなりの覚悟”と知識を持っていていただきたいのも事実です。

介護者が持つべき“それなりの覚悟”

私が考える“それなりの覚悟”とは、介護者である家族が、患者を自宅で看取る=“多くの場合、病気の状態は良くはならず悪化していく”ということをしっかり理解するということです。

そして、病院に行って治療をするよりも、本人にとってご自宅で亡くなるということがベストであると介護者が納得していることでもあります。

例えば、病院でなら最後まで積極的な治療を続けることができるかもしれませんが、治療をしたところで何日延命できるかわからず、“その治療の副作用を考えたら、もう治療はやめた方がいい”などと、介護者がしっかりした想いを持っていることなどです。

介護者の気持ちが固まってないと、いざ苦しそうな状況に直面した際には、“病院に行ったら楽にしてもらえるんじゃないか”という迷いが生じてしまいます。

もちろん、つらい状況の中で迷いを生じるのは当たり前なのですが、最期の最後でバタバタと入院をすることは、その方にとって幸せなのかどうかを再度思い出していただきたいのです。

一概には言えませんが、病院でも在宅でも最期にできることは、点滴や痛みのコントロールなどであり、治療内容に大きな差はないことがほとんどです。

それがわかった時に、「これならやっぱり自宅においてあげた方が良かった…」と後悔の念を介護者が頂かれる場合もあります。

では、そのような後悔をもたないためには、どうしたらいいのでしょうか?

患者や家族が後悔なく看取りを迎えるには

それは、家族が看取りを考え始めた時点から、看護師や往診医が、先の見えるケアと知識を本人やご家族に提供していくことではないかと私は感じています。

1.患者・利用者に病院と在宅での違いを説明する

まずは、このまま自宅にいることのメリット・デメリット、逆に入院することでのメリット・デメリットをわかりやすく説明します。

自宅での治療のメリット・デメリット

在宅での治療を継続するならば、慣れ親しんだ環境や生活の場に居られることにより、その方がその方らしく過ごせるというメリットがあると思われます。

その方らしく過ごせるということは精神面での安定やQOLが向上することにもつながります。

また介護者も、最期まで一緒に寄り添うことができたという想いを持てるかもしれません。

しかし一方で、在宅では常に医療者がそばにいるわけではないので、緊急対応には病院よりも時間を要したり、限られた医療物資でケアを行わないとなりません

また、介護者にとっては、毎日の介護での疲労や、大切な方が苦しまれる姿を目の当たりにすることでの精神的なストレスを抱える可能性もあり、それはデメリットとなる可能性もあります。

入院治療のメリット・デメリット

入院されていれば、医療者が病院には常在しているため、24時間の対応や積極的な治療を受けられるメリットがあります。

また、ご家族は患者の全面的な介護はなくなり、患者の辛そうな状況を自分だけで抱え込むこともなく、ある意味、医療者に患者の責任を委ねることができます

それは介護者にとってはかなり安心するものではないでしょうか。

しかし一方で、患者にとってはこれまでの日常から切り離されてしまい、会いたい人にも思うように会えず、食べたいものも食べれなかったり、自由に外出もできなかったりと生活を制限されるなどのデメリットも出てきます。

また、介護者にとって、病院に患者を委ねることで最後までみてあげられなかったという後悔の念を抱かれる方もおられます。

上記のようなメリット・デメリットを踏まえ、そのご家族の環境や関係性なども見ながら、最後の場所をどこにするかということを一緒に考えるということが大切なのではないかと思っています。

2.患者側に先の展開がみえるケアや自分でもできるケアの知識の提供する

そして次の段階として、在宅での看取りを迷われているならば、今度は具体的に在宅での病状はどのように変化をして、それに対してはどんなケアをしようと考えているのかを説明していきます。

ターミナルケア(終末期ケア)では基本的に、苦痛の無いように、楽に、自然な形でサポートしていくことをお伝えし、痛みが出たらこの薬、それでも辛い時にはこの薬も使えます…等と医師から説明してもらえると家族は安心されるのも事実です。

もちろん、痛み止めの使用の際は、呼吸抑制のリスク等も合わせて説明し、患者・家族側に理解していただく必要もあります。

そのような説明を患者・家族が一回で理解するのは難しいので、タイミングをみて繰り返し説明をしていきますが、それと同時に、身体が痛いと訴えてきた時のポジショニングの指導や、熱が出ている時はどの部分を冷やしてあげると熱が下がりやすい等、家族ができるケアも指導を重ねていくと、徐々に家族の表情は変わってくることが多いものです。

ケアの指導を受けた家族が、看取りができるかどうかと迷っていた時の不安そうな表情ではなく、大切な家族を最後までみてあげるにはどうしたらいいのか?というような、凛とした強さを感じるような表情に変化した姿を見た時、自分が看取りで大切にしていることは、“家族自らが、自分で最後までみてあげたいと思って頂けるようにサポートすること”なのかもしれないなと改めて感じました。

もちろん、全ての家族が看取りを希望される訳ではありませんし、逆に看取りを希望されていても、精神的、体力的に看取りが困難なケースも実際にあります。

そのため、このご家族に看取りの話を進めていいものかどうかを見極める観察力も、在宅医療に携わる医療職には必要だと考えています。

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