残薬や服薬不良の時に頼れる訪問薬剤師の存在
薬剤師が在宅に訪問して利用者の薬を管理するというサービスは、訪問看護師である私の知る限りではまだそんなに浸透していないように思われます。
何故なら薬剤師が入らずとも訪問看護師が内服管理をすることもできますし、その方が利用者にとってのコストも安くすむという点があるからです。
ですが、やはりプロの薬剤師に介入して貰って良かったなぁと実感したエピソードも沢山あるので、今回はその中の一部をご紹介したいと思います。
認知・筋力低下で転倒を繰り返す服薬不良の症例
72歳女性のAさん。独居であり、認知機能と下肢の筋力の低下で転倒を繰り返されており、全身状態と服薬の管理のため、訪問看護が週2回のペースで開始となりました。
訪問開始当初は、部屋の中は混沌としており、どこに薬があるのかさえわからない状態でした。
そこでまず、薬がどこにあり、いつどれだけ飲むかを整理するため、定番のお薬カレンダーに内服薬を数日分セットし、それでどれくらい飲み忘れがなく飲めるかということを観察することに。
数日後に訪問してお薬カレンダーをみてみると、半分以上の薬が残っている状態。
しかし、机やゴミ箱をみると、見たこともない薬が散乱しているため、“どうやらまだ把握しきれていない医療機関の薬があったのか?!”と驚かされたり。
とはいえ、退院直後は入院前とは体調も違うため、退院処方通りに内服を勧めたいのがこちらとしての本音。
そこでまずは、Aさんに理由を説明し、昔飲んでいた薬は今は飲まないことを納得していただき、入院前の薬を全部一つの箱にまとめて棚の上にしまうことにしました。
次に訪問に入ると、やはりお薬カレンダーでの服薬は中途半端に穴あきで、箱の中の薬はぐちゃぐちゃに散乱していたのです。
これには、「やはり中核症状による認知機能の低下があるので、飲まないようにお願いしても忘れてしまうし、かえって場所を変えることで混乱を招いたのかもしれない」と反省しました。
しかし、同じ薬を重複して飲まれている危険性もあったため、今度はAさんに「必要な薬はカレンダーにセットしてあるので、ほかの薬は整理するために預からせて下さい」と許可をとり、事務所に他の薬を全て引き上げてみることにしてみました。
今度はそうすると、その場では渋々納得していても、その約束を忘れてしまうと、「いつもの薬がない?!」と探し始めてしまうことに…。
また、中核症状があっても、長年飲んでいる薬は形をみただけで何の薬とわかっていたため、余計に管理が困難をきたしていたのでした。
お薬カレンダーだけでは服薬コンプライアンスを改善できない時には
このように、あまりに薬の管理が大変であったところ、ケアマネジャーが薬局の訪問サービスを提案して下さり、介入していただくことになりました。
そこで、薬剤師にことの経緯を相談し、以下の状況や問題をどうしたらいいのかを一緒に考えてもらうことにしたのです。
- ①Aさんは入院前に飲んでいた他の科の薬はどうしても飲みたいらしいこと
- ②残薬が箱に沢山あり、そこからも重複して飲んでしまっているようであること
- ③飲み忘れが多く、どんどん残薬自体も増えてしまっていること
上記の内容をお伝えしたところ、薬剤師が着目した点は以下の通り。
- ①Aさんが飲みたがっている薬はどこから処方されていて、何のために飲んでいるのか
- ②現在の退院処方と内容が重複していないか(重複投与)
- ③現在の退院処方との飲み合わせは大丈夫か(相互作用)
- ④残薬はどれくらいあるのか
そこで、薬剤師はAさんの目の前で薬の選別を始めたのです。
「この薬は今飲んでる薬と重なってるのでこちらにしますね」とか「整形の薬はずっと飲まれてきてるのでしょうから、飲み合わせは問題ないのでいいと思います。医師の先生に確認しますので、お待ち下さいね」などなど。
そして、最終的に一回に飲む薬の内容が決まったところで、専門のグッズを取り出して、清潔操作で薬の一包化を開始。
そのスマートな動きに思わず惚れ惚れとしてしまいました。
Aさんも長年飲み続けてきた薬が一包化されているためようやく安心され、残薬を引き上げることにも嫌な顔をされませんでした。
さらには、「沢山の残薬も全て持ち帰って、バラして再生できますよ」とのことで、さすがプロだなぁと感激した記憶があります。
今回の事例のように、薬剤師が在宅ケアに介入することで、その分看護師がケアに集中できるようになるケースも多くあり、そういった点からも在宅での多職種連携の大切さを再認識しているこの頃です。
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