【第33回(2019年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問137臨床「神経性やせ症(神経性食欲不振症)患者の栄養管理」

33-137 23歳、女性。身長150cm、体重34kg(標準体重50kg)、BMI 15.0kg/m2、2週間以上、ほとんど摂食できていない神経性やせ症の患者である。緊急入院させ、静脈栄養管理となった。輸液開始時に投与する1日当たりのエネルギー量である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。

(1) 500kcal/日
(2)1,000kcal/日
(3)1,500kcal/日
(4)2,000kcal/日

正解:1

【解説】

神経性食欲不振症(神経性やせ症)の問題と経腸栄養の問題の複合的な出題です。

ざっくり覚えたいのが、末梢静脈栄養は軽度の栄養不足で適応になり600~1,300kcal/日の補助的な補給、中心静脈栄養は重度(長期)の栄養不足で適応となり1,500~2,500kcal/日の全面的な補給ができるという違いです。

まずはこの患者の必要エネルギー量を計算しましょう。

1日当たりのエネルギー摂取量(kcal)=標準体重(Kg)×身体活動量(kcal)ですから、50kg×25~30kcal=1,250~1,500kcalです。

したがって、この時点で選択肢(4)2,000kcal/日は除外されます。

入院で静脈栄養管理を行いますが、静脈栄養には中心静脈栄養(TPN)と末梢静脈栄養(PPN)の2種類があります。

経管栄養が2週間以上の長期にわたる場合にはじめて、中心静脈栄養が選択されます。
また、日本静脈経腸栄養学会によれば、末梢静脈栄養(PPN)の適応条件は下記です。

①経口摂取や経管栄養は可能であるが、必要量が充足できない場合
②術前の栄養状態が比較的良好で、早期に経口摂取が再開できると予想される場合
③腸閉塞や胃腸炎で一時的に経口摂取を中止するが、短期間で再開されると予想さ
れる場合

したがって、この患者では末梢静脈栄養(PPN)が適応となります。

また、末梢静脈から投与できる輸液製剤は、高エネルギー=高浸透圧なものは血管炎などを生じるため、浸透圧比で3以下のものに限られます。

末梢静脈栄養(PPN)では、糖・電解質・アミノ酸輸液に脂肪乳剤を併用しても1,000 ~1,300kcal/日しか投与することはできません。

したがって、輸液で1日の必要エネルギー量をすべて賄いたくても、末梢静脈栄養(PPN)では1,000~1,300kcal/日までしか入れられないのです。

つまり選択肢(1)500kcal/日か(2)1,000kcal/日のどちらかですが、BMI15のような極度の栄養不足の患者に多量のエネルギーを投与すると、体内の電解質バランスを崩してしまうリフィーディング症候群を引き起こすおそれがあります。

したがって、この患者では500kcal/日から開始するのが最適です。

なお、厚生労働省「神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン(2007年) 」では食事療法を以下のように記しています。

食事は500~1,000 kcal程度から開始して漸増し、退院時にはその時の体重を維持できるエネルギーを摂取できるように指導する。

1=○:500kcal/日は栄養不足の患者への開始エネルギー量として最も適切です。

2=×:1,000kcal/日は、この患者への静脈栄養としては妥当ですが、リフィーディング症候群のおそれがあるため、最も適切な選択肢ではありません。

3=×:1,500kcal/日では、この患者への静脈栄養として給与できないため、不適切な選択肢です。

4=×:2,000kcal/日では、この患者の必要エネルギー量よりも多いため、不適切な選択肢です。

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