【第30回(2018年)介護福祉士国家試験過去問解答・解説】問題4

Cさん(87歳,女性)は,介護老人保健施設に入所している。

最近,Cさんがレクリエーション活動を休むことが多くなったので,担当のD介護福祉職はCさんに話を聞いた。Cさんは,「参加したい気持ちはあるので,次回は参加します」と言いながらも,浮かない表情をしていた。D介護福祉職は,「自分の気持ちを我慢しなくてもいいですよ」とCさんに言った。

この時のD介護福祉職の言葉かけに該当するバイステック(Biestek,F.)の7原則の内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 秘密保持
2 自己決定
3 非審判的態度
4 意図的な感情表出
5 個別化

正解:4

【解説】
1957年にアメリカのケースワーカーで社会福祉学者であるバイステックが著書『ケースワークの原則』で記した原則=バイステックの7原則では、援助者(ワーカー)と利用者(クライエント)の関係について下記のように示されました。

個別化:援助者は、利用者の個別性に応じた援助を行う。利用者の抱える問題は人それぞれ個別性のある問題であり、“同じ問題は存在しない”。そのため、問題のラベリングやパターン化はNGである。
意図的な感情表出:利用者が自分の気持ちを自由に表現できるようにする。
制御された情緒的関与:援助者は自分の感情を自覚して吟味する。
受容:援助者は、利用者のありのままを受け止める。
非審判的態度:援助者は、利用者の言動や行為を一方的に非難・批判をしない。
自己決定:援助者は、利用者の自己決定を尊重する。
秘密保持:援助者は、利用者の個人情報やプライバシーなどの秘密を第三者に漏らさない。

この設問では、利用者であるCさんの「次回は参加します」という肯定的な発言と、浮かない顔をしているという否定的な態度が矛盾している点から、利用者が自分の気持ちを自由に表現できていないことが理解できます。

そのため援助者としては、利用者が自分の気持ちを自由に表現できるよう、声かけすることが適切です。

1:利用者の感情は秘密に該当せず、また、発言自体も“我慢をさせない”ことを意図しているため、不適切。
2:発言と態度が矛盾しているため、「自己決定」自体がきちんとなされていないと推測でき、不適切。
3:援助者のこの発言は、利用者が気持ちを我慢していることを批判する表現ではないと考えられるため、不適切。
4:利用者が自分の気持ちを自由に表現する「意図的な感情表出」を助けるような声かけであり、適切。
5:問題が個別的に対応する以前の、情報収集段階での声かけと判断できるため、不適切。

TIPS
『バイステックの7原則』の具体例を理解しておきましょう。
傾聴、受容、個別化…医師・看護師・薬剤師や介護福祉士などの介護職が身につけたいコミュニケーション技法
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