【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問122 臨床「脂質異常症の栄養管理」

35-122 脂質異常症の栄養管理に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)高LDLコレステロール血症では、飽和脂肪酸の摂取エネルギー比率を10%E とする。
(2)高LDL コレステロール血症では、コレステロールの摂取量を 400mg/日とする。
(3)低 HDL コレステロール血症では、トランス脂肪酸の摂取を増やす。
(4)高トリグリセリド血症では、n-3系脂肪酸の摂取を控える。
(5)高カイロミクロン血症では、脂肪の摂取エネルギー比率を 15%Eとする。

正解:5

【解説】

(1)×:高LDLコレステロール血症では、飽和脂肪酸の摂取エネルギー比率を4.5%E以上~7%E未満 とする。
高LDLコレステロール血症は、血中のLDLコレステロールが140mg/dL以上となる脂質異常症です。

健常者も脂質異常症患者でも、飽和脂肪酸の摂取を制限することで血中総コレステロール濃度やLDLコレステロール濃度が低下することが知られています。

そのため、高LDLコレステロール血症をはじめ、脂質異常症では、飽和脂肪酸の摂取量は4.5%E以上~7%E未満とすることが薦められています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版』)。

(2)×:高LDL コレステロール血症では、コレステロールの摂取量を200mg/日とする。
高LDLコレステロール血症は、LDLコレステロールの濃度が高くなっている状態ですので、コレステロールの摂取を制限する必要があります。

高LDLコレステロール血症患者では、コレステロールの摂取を200mg/日未満とすることで、LDLコレステロールの低下効果が期待できるとされています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017 年版』)。

なお、『日本人の食事摂取基準2020年版』も、このガイドラインに準拠して、脂質異常症の重症化予防の目的として、コレステロール200mg/日未満としています。

(3)×:低HDLコレステロール血症では、トランス脂肪酸の摂取を減らす。
低HDLコレステロール血症は、血中のHDLコレステロールが40mg/dL未満がとなる脂質異常症です。

食べ物と健康領域で学ぶように、飽和脂肪酸ほどではないですが、トランス脂肪酸は健康な者の血清LDLコレステロールを上昇させると同時に、HDLコレステロールを低下させることが報告されています(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)。

海外ではトランス脂肪酸の摂取は制限されていますが、日本人の通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられるため、日本人の食事摂取基準や診療ガイドラインなどで、明確な制限値は設けられていませんが、摂取を減らすことが推奨されています。

なお、世界的にはトランス脂肪酸の摂取量は、WHOが推奨する1%E未満に留めることが望ましいとされています。

国試的には、いかなる疾患でもトランス脂肪酸の摂取が推奨されることはないと覚えておきましょう。

(4)×:高トリグリセリド血症では、n-3系脂肪酸の摂取を増やす。
高トリグリセリド血症は、血中のトリグリセリドが150mg/dL以上となる脂質異常症です。

n-3系脂肪酸は、生体内で合成できず、欠乏すれば皮膚炎などを生じる必須脂肪酸です。
また、動脈硬化への改善効果が期待されるため、『日本人の食事摂取基準2020年版』では目安量が設定されています。

脂質異常症では動脈硬化のリスクを高めるため、n-3系脂肪酸の摂取が推奨されています。

国試的には、いかなる疾患でもn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の摂取は否定されないと覚えておきましょう。

(5)○:高カイロミクロン血症では、脂肪の摂取エネルギー比率を15%Eもしくは20g以下とする。
高カイロミクロン血症は、血中のトリグリセリドが1,000mg/dL以上かつ絶食後のカイロミクロン証明が診断基準となる脂質異常症です。

カイロミクロンとは、脂質(トリグリセリド)が胆汁によって乳化されて小腸から吸収された後に、トリグリセリドやビタミンなどを運ぶために合成されるリポたんぱく質です。

カイロミクロンはリポたんぱく質リパーゼによってカイロミクロン中のトリグリセリドが分解されてカイロミクロンレムナントに代謝されながら肝臓へと運ばれます。

このリポたんぱく質リパーゼによる代謝がなんらかの理由で妨げられ、血液中のカイロミクロン濃度が高まるのが、高カイロミクロン血症です。

したがって、高カイロミクロン血症では、脂質を多く含むカイロミクロンが代謝されないため、他の脂質異常症よりも厳格に脂質制限を行う必要があり、15%E以下もしくは20g/日とすることが推奨されています(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017 年版』)。

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