35-104 K大学の学生食堂では、全メニューに小鉢1個がついている。小鉢の種類には、肉料理、卵料理、野菜料理、果物・デザートがあり、販売ラインの最後にある小鉢 コーナーから選択することになっている。ナッジを活用した、学生の野菜摂取量を増やす取組として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
(1)食堂の入口に「野菜は1日 350g」と掲示する。
(2)小鉢コーナーの一番手前に、野菜の小鉢を並べる。
(3)小鉢は全て野菜料理とする。
(4)小鉢の種類別に選択数をモニタリングする。
正解:2
【解説】
ナッジとは、行動経済学で生まれた用語で、「ひじで軽く突く」「そっと後押しする」という意味の英語です。選択の自由を与えながら、金銭的に誘導するわけではなく、行動経済学に基づいて人々に行動変容を促す方法をいいます。
ナッジは、平成30年管理栄養士国試出題基準で新しく導入されたキーワードです。
例えば、男性の小便器トイレは小便が飛び散って汚れがちです。
このような汚し方を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。
その男性に理性・自覚・理解を求めて、小便が飛び散らないように教育を行うのも一案です。
このような汚し方を防ぐ方法として、小便器に的を書くという方法があります。
小便器に的を書くことで、男性が小便で的を狙ってしまうという心理的な習性を活用して、結果的に小便器が汚れないようにするというものです。
この男性には小便器を汚さないように使おうという理性・自覚・理解が求められていません。
このような、人間の習性や心理的なバイアスを利用して、本人の自覚なく望ましい選択(健康行動)を行うこと、いわば、選ばせないで望ましい選択させることがナッジという概念です。
なお、ナッジでは、小便器では的を狙いなさいというような強制性を必要としません。
その人にある程度の選択制を残しつつ、無自覚で自発的な行動を引き出すということがポイントです。
(1)×:食堂の入口に「野菜は1日 350g」と掲示することは、ナッジに当たりません。
「野菜は1日 350g」とは、達成すべき野菜の摂取量を意味します。
どのくらい野菜を食べなくてはいけないかというような本人の理解を求めた方法は、ナッジではありません。
(2)○:小鉢コーナーの一番手前に、摂取してほしい野菜の小鉢を並べることは、ナッジに当たります。
小鉢コーナーへと目が行くということは、もう1品なにか食べたいなということであり、ここに健康行動の意識はありません。
その行動の中に、手前にあるものは目に入りやすく思わず手に取りやすいという無自覚な行動を利用して、手前に野菜を置くことで、野菜摂取という望ましい行動を選択してもらう方法ですので、ナッジに当たります。
(3)×:小鉢は全て野菜料理とすることは、ナッジではないとされています。
本人が望ましいものを選択する前に、選択されるもの自体を望ましいものに変えるということ、選択物の初期設定(デフォルト)を変えることもナッジに当たる方法です。
しかし、すべての小鉢を野菜料理とすることは、ある種の強制性があるため、ナッジとはいえません。
ですが、小鉢コーナーで小鉢を選ばなくてもいいので、強制性があるともいいきれないため、少々判断に迷う選択肢でしょうか。
(4)×:小鉢の種類別に選択数をモニタリングすることは、ナッジに当たりません。
教育者がモニタリングをしても、その結果が対象者(学習者)に伝えられたり、その結果を基づいた対象者へのアクションがなければ、行動変容は期待できません。
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