嚥下食、ムース食、トロミ食、ソフト食、スマイルケア食…誤嚥性肺炎予防と嚥下障害時対応の食事の種類

『嚥下障害』とは？

『嚥下（えんげ）障害』とは、飲食物を飲み込む運動＝嚥下が障害されることです。

嚥下障害により、口から食べること（経口摂取）が困難となり栄養低下を引き起こしたり、食べ物が食道ではなく気道に侵入してムセる『誤嚥（ごえん）』を引きこします^1）。

厚生労働省によれば、日本の年間死亡者数は約130万人であり、平成29年では、そのうち2.7％は誤嚥性肺炎で死亡していると報告^2）されています。

また、寺本 信嗣先生の研究によれば、入院している高齢者肺炎患者の70％以上は誤嚥性肺炎が原因との報告^3）もあり、高齢者における嚥下障害が問題となっています。

Teramoto, S et al：High incidence of aspiration pneumonia in community- and hospital-acquired pneumonia in hospitalized patients : a multicenter, prospective study in Japan. J Am Geriatr Soc.2008;56:577-579より作成

嚥下障害は脳梗塞やALS（筋萎縮性側索硬化症）、パーキンソン病などの神経・筋にかかわる疾患により引き起こされます。

このような摂食・嚥下障害のある人が口から適切に食べられるよう設計されているのが『嚥下食』です。

『嚥下食』とは？

『嚥下食』として相応しい、食べやすい、飲み込みやすい形態とは下記のような要素を持つもの^4）といえます。

①食品の大きさや硬さがそろっている
②歯や口腔内，喉に貼りつかない，口腔内でべたつかない
③口腔内でバラバラにならない
④喉ごしがスムーズである

嚥下食は具体的には、噛んだり飲み込んだりするのが困難な人向けに食べ物をムース状にした『ムース食』や、サラサラした液体が飲みにくい人向けに、ゼラチンや増粘剤などでトロミをつけた『トロミ食』などがあります。

そして、食べものの食べやすさを、普通食から嚥下食まで6段階に評価した『嚥下食ピラミッド』が金谷節子先生により提唱されました^5）。

金谷節子監：『嚥下食ドットコム』図3-2嚥下食ピラミッドより作成

『高齢者ソフト食』

また、管理栄養士である黒田留美子先生は、「高齢者の食べる楽しみと喜びをいつまでも」という思いから、介護現場で常識的だった『きざみ食』『ミキサー食』と異なる食形態として、『高齢者ソフト食』を提案されました。

『ユニバーサルデザインフード（UDF）』

業界団体としては、日本介護食品協議会が自主規格として2003年に『ユニバーサルデザインフード（UDF）』を作成しました。

『ユニバーサルデザインフード（UDF）』は、日常の食事から介護食まで幅広く利用できる、食べやすさに配慮した食品です^6）。

レトルト食品や冷凍食品などの調理加工食品をはじめ、飲み物やお食事にとろみをつける『とろみ調整食品』などが様々な種類があり、食品につけられたロゴマークにより「かむ力、飲み込む力」にどの程度相応しいかが判断できるようになっています。

（日本介護食品協議会HPより転載）

スマイルケア食

嚥下食に関連する名称や規格が多数あるなか、これらの介護用食品の規格を農林水産省が整理したものが『スマイルケア食』です。

『スマイルケア食』は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです^7）。

（農林水産省：『スマイルケア食の取り組みについて』より転載）

誤嚥性肺炎って何！？あの訪問歯科はこうやってはじまった！『未来をつくるkaigoカフェ』レポート～新食研編part1～