【第33回(2019年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問35人体「内分泌疾患」

33-035 内分泌疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

(1)原発性アルドステロン症では、高カリウム血症がみられる。
(2)甲状腺機能亢進症では、徐脈がみられる。
(3)ADH不適切分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症がみられる。
(4)褐色細胞腫では、低血糖がみられる。
(5)クッシング症候群では、中心性肥満がみられる。

正解:5

【解説】
1=×:原発性アルドステロン症では、低カリウム血症がみられるため、誤った選択肢です。

アルドステロンは、昇圧物質であるアンジオテンシンⅡが代謝されて生じる昇圧ホルモンです。

アルドステロンはナトリウムを体内にとどめると同時にはカリウムを排出する働きがあり、これにより循環血液量を増やして血圧を高めます。

したがって、原発性アルドステロン症では、低カリウム血症となります。

電解質バランスを調整するうえで、ナトリウムとカリウムはシーソーの関係にあることを理解しておくとよいでしょう。

2=×:甲状腺機能亢進症では、頻脈がみられるため、誤った選択肢です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、自己免疫の異常により自己抗体が甲状腺を刺激することで、過剰に甲状腺ホルモン(T3、T4)を産生・分泌させてしまう免疫・代謝疾患です。

甲状腺ホルモン(T3、T4)は身体の代謝を促すホルモンであるため、甲状腺ホルモンが過剰となると代謝=エネルギー消費が高まります

代謝やエネルギー消費が活発となるためには、全身にエネルギー=血液を届ける必要があるため、血液を送る心臓の働きも活発となります。

したがって、甲状腺機能亢進症では徐脈ではなく、頻脈となります、

3=×:ADH不適切分泌症候群(SIADH)では、低ナトリウム血症がみられるため、誤った選択肢です。

ADH不適切分泌症候群(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群;SIADH)とは、抗利尿ホルモン(AFH)≒バソプレシンが、不適合な(不適切に)分泌されている症候群です。

バソプレシンは、腎臓に作用することで尿細管で尿となる水分の再吸収を促進する作用があります。利尿(尿の排出)とは逆に尿の排出を減らすので、抗利尿という訳です。

バソプレシンによって血液の水分が増えるため、相対的に血液中のナトリウム濃度は低下します。
したがって、バソプレシンを過剰に分泌する抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、低ナトリウム血症となります。

4=×:褐色細胞腫では、高血糖がみられるため、誤った選択肢です。

褐色細胞腫とは、副腎髄質に発生する腫瘍です。

カテコールアミンを分泌する副腎髄質に褐色細胞腫ができることで、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)が過剰に分泌されます。

カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)は交感神経に働きかけるホルモンなので、褐色細胞腫により交感神経が過剰に優位になり、身体中の血管を収縮させて高血圧となったり、代謝亢進により頻脈ややせ、頭痛などを引き起こします。

また、血糖をさげるホルモンであるインスリンに対して、血糖を上げるホルモンとして、成長ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)、副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)甲状腺ホルモン、グルカゴン、ソマトスタチンなどがあり、多くのホルモンは高血糖にはたらきます。

つまり、ホルモンの分泌が高まると、高血糖に傾きます

したがって、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)を過剰に分泌する褐色細胞腫では高血糖がみられます。

5=○:クッシング症候群では、中心性肥満がみられるため、正しい記述です。

クッシング症候群とは、副腎皮質から分泌される糖質コルチゾールというホルモンが過剰となる症候群です。

コルチゾールは、糖・たんぱく質・脂質の代謝を調整しています。

コルチゾールは肝臓での糖新生(アミノ酸からグルコースを合成)を促進する働きや、たんぱく質を分解してアミノ酸とし、糖新生で活用させる働きがあります。

また、コルチゾールにはインスリン抵抗性を引き起こす働きもあります。

つまり、コルチゾールは糖を増加させる働きがあるので、コルチゾールを過剰分泌させるクッシング症候群では高血糖となります。

なお、コルチゾールは脂肪の分解を促進することで、血中の遊離脂肪酸とグリセロールの濃度を高めると同時に、脂質の合成も促進するため、クッシング症候群では、満月様顔貌・水牛肩・中心性肥満が生じます。

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