【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問90 応用「新生児期・乳児期の生理的特徴」

35-090 新生児期・乳児期の生理的特徴に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)新生児の唾液アミラーゼ活性は、成人より高い。
(2)生後3か月頃の乳児では、細胞外液が細胞内液より多い。
(3)溢乳は、下部食道括約筋の未熟が原因の1つである。
(4)乳歯は、生後3か月頃に生え始める。
(5)母乳栄養児は、人工栄養児よりビタミンKの欠乏になりにくい。

正解:3

【解説】
(1)×:新生児の唾液アミラーゼ活性は、成人より低い。
アミラーゼは、でんぷんやグルコースなどの糖質を分解する消化酵素です。
新生児は、咀嚼機能が完成していませんので、グルコースを含む米や小麦、でんぷんを含むいも類をエネルギー源としません。

したがって新生児では、食事でこれらを分解・消化をしないため、唾液アミラーゼ活性は成人より低くなっています

なお、新生児で高まる消化酵素の活性は、新生児のエネルギー源である母乳を分解するラクターゼです。

(2)×:生後3か月頃の乳児では、細胞外液が細胞内液より少ない。
成人での体水分量は体重の60%を占めますが、新生児や乳児は80%が体水分で占めています。
赤ちゃんは水分量が多いということですね。

体水分は細胞外液(血液・間質液など)と細胞内液(細胞内の水分)で構成されています。

新生児では細胞外液も細胞内液も全体の約40%づつと同じ割合で存在していますが、生後3か月で細胞外液が全体の約30%へと減少し、1歳には成人と同じように細胞外液が全体の約20%、細胞内液が全体の約40%となります。
つまり、新生児は成人より細胞外液が多く、成人へと成長するに伴い細胞外液が減少するということです。

したがって、生後3か月頃の乳児では、細胞外液が細胞内液より少なくなるといえます。
新生児は、細胞外液が多いため脱水しやすいですが、生後3か月頃から細胞外液の減少がみられて水分出納が安定していく、ということかと思います。

(3)○:溢乳は、下部食道括約筋の未熟が原因の1つである。
溢乳(いつにゅう)とは、授乳後の乳児の口から少量の乳汁があふれ出ることをいいます。
これは病気ではなく、生理的な現象です。

乳児では胃が未熟で小さいため、乳汁などの飲食物を貯める容量が少ないことがあり、また、食道と胃の境界部にある噴門の括約筋も未成熟・未発達で緩んでいるため、胃の内容物が逆流しやすいことが原因です。

(4)×:乳歯は、生後6~9か月頃に生え始める。
乳歯が生え始める時期は、個人差がありますが、一般的には生後6~9か月頃とされています。

また、乳歯数は「乳歯数=月齢-6」の式で求めるとされていることから、生後6か月未満は乳歯が生えていないと考えられています。なお、『授乳・離乳の支援ガイド(2019年版)』では、生後3か月では歯をつかった食事についての記載がありません。

(5)×:母乳栄養児は、人工栄養児よりビタミンKの欠乏になりやすい。
母乳中にはビタミンK含有量が少ないため、母乳栄養児ではビタミンK欠乏症が報告されています。
また、新生児は腸内細菌叢が成長しておらず、ビタミンK産生腸内細菌が少ないためビタミンKが不足しやすい状況です。


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