35-121 55歳、男性。デスクワーク中心の仕事。身長165cm、体重76kg、BMI 27.9kg/m2、標準体重60kg、内臓脂肪面積110cm2。他に異常は認められなかった。この患者の1日当たりの目標栄養量である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギー 600kcal
(2)たんぱく質 70g
(3)脂質 10g
(4)炭水化物 300g
(5)食塩 10g
正解:2
【解説】
まずはこの患者の読み解きです。
体重が標準体重より16kgも多くBMIも25以上ですので、軽度の肥満です。
内臓脂肪面積が100cm2以上ありますので、メタボリックシンドロームの基準を満たしています。
したがって、この患者は、肥満・メタボリックシンドロームへの栄養管理となります。
肥満・メタボリックシンドロームの栄養管理では、エネルギー摂取量を制限するなかで、たんぱく質を推奨量以上確保したうえで、脂質は通常通り20~30%E、残りの炭水化物を減らすという方針になります(肥満症診療ガイドライン2016)。
(1)×:この患者の目標エネルギー摂取量は、1,200~1,500kcal/日程度である。
目標エネルギー摂取量 600kcal=超低エネルギー食療法(VLCD;Very Low Calorie Diet)が適応となるのは、BMI30以上中程度の肥満(肥満2度)以上です。
したがって、この患者の目標エネルギー摂取量は600kcal/日ではありません。
摂取エネルギー設定にはいくつか方針があり、0kcal/日とする絶食療法、200~600kcal/日とする超低エネルギー食療法(VLCD)、20~25kcal/kg標準体重/日とする減食療法があります。
方針によって摂取エネルギー量が変わるため、選択肢でもズバリ何kcalとなるかという問いではなく、中程度肥満(BMI30以上)以上=超低エネルギー食療法(200~600kcal/日)を知っていますか?という主旨となっています。
なお、この患者の摂取エネルギー量は、デスクワーク中心と運動量も少なく、それほど深刻な肥満でもないため、減食療法が適応となるのが基本と考えられ、20~25kcal/kg標準体重/日×60kg=1,200~1,500kcal/日程度となります。
(2)○:この患者の目標とするたんぱく質摂取量は60~72g/日である。
肥満においてたんぱく質の摂取制限はありませんので、一般的に推奨される1.0~1.2g/kg標準体重/日が適応されます。
したがって、この患者の目標とするたんぱく質摂取量は1.0~1.2g/kg標準体重/日×60kg=60~72g/日となります。
腎機能低下などがない限り、成人ではたんぱく質摂取量は50~70g/日と覚えてよいと思います。
(3)×:この患者の目標とする脂質の摂取量は27~50g/日程度である。
肥満において脂質の摂取制限はありませんので、一般的に推奨される20~30%Eが適応されます。
この患者の目標エネルギー摂取量は、1,200~1,500kcal/日程度なので、1,200~1,500kcal/日×20~30%E=240~450kcal/日分を脂質で摂取するため、240~450kcal/日÷9=約27~50g/日となります。
ここまで計算しなくても、脂質 10g/日は軽度肥満に対して少なすぎるなという感覚があれば、すぐに除外できるでしょう。
(4)×:この患者の目標とする炭水化物の摂取量は113~255g/日程度である。
炭水化物の摂取量は、エネルギー必要量のうちたんぱく質と脂質で摂取した分の残りの分となります。
目標エネルギー摂取量1,200~1,500kcal/日程度に、脂質分のエネルギー摂取量240~450kcal/日からすると、明らかに炭水化物300g=1,200kcalは過剰です。
なお、この患者での炭水化物の摂取量は、1,200~1,500kcal/日のうち、たんぱく質60~72gで240~288kcal、脂質で240~450kcalを給与するため、炭水化物を抑えると、1,200~1,500kcal-(たんぱく質上限288kcal+脂質上限450kcal)=463~762kcalを4で割るので、113~190g、炭水化物を許容すると1,200~1,500-(240+240)=720~1,020kcalを4で割るので、180~255gとなるため、113~255gが摂取可能範囲となります。
(5)×:この患者の目標とする食塩摂取量は7.5g/日未満である。
肥満は高血圧を悪化させるリスク要因です。
高血圧がある場合の食塩摂取量は6g/日未満ですが、高血圧がなければ、成人男性で7.5g/日未満、成人女性で6.5g/日未満となります(高血圧治療ガイドライン2019)。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量はこの高血圧治療ガイドライン2019に準拠していますので、これらの値がそのまま採用されています。
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