【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問39 人体「血液疾患」

35-039 血液疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)血友病では、プロトロンビン時間(PT)が短縮する。
(2)再生不良性貧血では、骨髄が過形成を示す。
(3)悪性貧血では、内因子の作用が増強する。
(4)鉄欠乏性貧血では、総鉄結合能(TIBC)が低下する。
(5)播種性血管内凝固症候群(DIC)では、フィブリン分解産物(FDP)が増加する。

正解:5

【解説】
(1)×:血友病では、プロトロンビン時間(PT)が延長する。
血友病とは、血液凝固因子が先天的に欠損しており、血液が固まりにくくなる(止血が困難になる)疾患です。

プロトロンビンとは血液凝固因子の1つで、トロンボプラスチンを加えることで血液を凝固させるようになります。このプロトロンビンが血液を凝固するまでの時間を測定したものがプロトロンビン時間(PT)です。

したがって、血友病では血液凝固因子が欠損して血液が凝固しにくくなるため、プロトロンビン時間(PT)は長くなります。

(2)×:再生不良性貧血では、骨髄が低形成を示す。
再生不良性貧血とは、骨髄での造血幹細胞の産生が少なくなる(低形成となる)疾患です。

造血幹細胞は赤血球や白血球などの元となる細胞ですので、赤血球が不足して貧血となります

(3)×:悪性貧血では、内因子の作用が減弱する。
内因子とは、ビタミンB12吸収を助けるために胃から分泌される糖たんぱく質です。キャッスル内因子ともいいます。

ビタミンB12はDNAの合成に必要な成分であり、ビタミンB12が不足すると赤血球の前段階である赤芽球が正常に成長できず、未熟で巨大な巨赤芽球となり、貧血を生じます。これが巨赤芽球性貧血で、悪性貧血ともいいます。

(4)×:鉄欠乏性貧血では、総鉄結合能(TIBC)が上昇する。
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで、ヘモグロビン〔ヘム(鉄+ビリルビン)+グロビン〕を合成できずに生じる貧血です。

トランスフェリンは鉄を運搬するたんぱく質で、トランスフェリンと鉄が結合している割合を、総鉄結合能(TIBC)として表します。

鉄欠乏性貧血では、鉄自体が不足しているので、トランスフェリンは鉄と結合できず、手持ち無沙汰となり、鉄と結合できやすくなります。したがって、鉄欠乏性貧血では、総鉄結合能(TIBC)が高まります。

(5)○:播種性血管内凝固症候群(DIC)では、フィブリン分解産物(FDP)が増加する。
播種性血管内凝固症候群(DIC;ディーアイシー)とは、全身の血管のいたるところで血液が凝固して血栓が多発する疾患です。
播種性とは散らばっていることをいいます。

血友病は血液が固まらない疾患ですが、DICは血液が固まりすぎる疾患です。

フィブリンは血液を凝固させるたんぱく質で、フィブリンがあつまって血栓を形成して、止血します。

DICでは、なんらかの原因で血管に炎症がおこり、炎症の刺激により組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)が分泌されます。tPAやプラスミノーゲンの両方の作用により、血液を凝固させているフィブリンが分解され、フィブリン分解産物(FDP)となります

したがって、DICでは血栓が生じるともに、血栓の分解物であるフィブリン分解産物(FDP)が増加します。


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