【第35回(2021年)管理栄養士国家試験過去問解答・解説】問53 食べ物「細菌性食中毒」

35-053 細菌性食中毒に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)サルモネラ菌は、神経性の毒素を産生する。
(2)黄色ぶどう球菌による食中毒の潜伏期間は、2~7日間である。
(3)ウェルシュ菌による食中毒の主症状は、血便である。
(4)カンピロバクター感染症は、ギラン・バレー症候群の原因となる。
(5)腸管出血性大腸菌は、100℃ 3分間の煮沸では殺菌できない。

正解:4

【解説】
(1)×:サルモネラ菌は、毒素を産生しない。
細菌性食中毒は、感染型と毒素型に分類できます。

サルモネラ菌は感染型に分類され、細菌が増殖した食べ物を摂取することで発生する食中毒です。
毒素を産生せず、主に腸管での感染による消化器症状が中心です。

一方、細菌が増殖したうえで毒素を産生し、産生された毒素が原因で引き起こされるのが毒素型の食中毒です。
代表的な毒素型の細菌性食中毒には、ボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌、セレウス菌(嘔吐型)があります。

ボツリヌス菌が産生するボツリヌス神経毒素は、神経症状を引き起こします。
また、黄色ブドウ球菌が産生する毒素(エンテロトキシン)は、消化器症状だけではなく髄膜炎なども引き起こします

(2)×:黄色ぶどう球菌による食中毒の潜伏期間は、1~5時間である。
黄色ブドウ球菌は潜伏期間が短く、食後すぐに発症するのが特徴です。
黄色ブドウ球菌は、60~65℃、10~30分の加熱処理で死滅しますが、エンテロトキシンは熱に強く、110℃で400分の加熱が必要とされています。

なお、食中毒の潜伏期間が2~7日間となるのは、カンピロバクター(鶏肉などで感染)です。

(3)×:ウェルシュ菌による食中毒の主症状は、水様性便(下痢)や腹痛である。
ウェルシュ菌は、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌で、多くは食肉や魚介類を使った料理、とりわけカレーでの食中毒での原因菌となります。

ウェルシュ菌は熱に強いため、ウェルシュ菌におかされたカレーなどを再加熱するとウェルシュ菌の芽胞の発芽が促進されて、毒素(エンテロトキシンなど)を産生します。エンテロトキシンも熱に強く、100℃3分では死滅しません。

ウェルシュ菌は潜伏期間6~18 時間(平均 10 時間)の後、腹痛や下痢等の症状を起こします。発熱や嘔吐、血便はほとんどみられません。

(4)○:カンピロバクター感染症は、ギラン・バレー症候群の原因となる。
ギラン・バレー症候群は、カンピロバクター属菌に感染することで引き起こされる末梢神経障害(ニューロパチー)です。
上気道感染や下痢を伴う胃腸炎を生じ、1~2週間後に手足の先にしびれなどの神経症状がみられます。

神経症状は呼吸筋にも及び、人工呼吸器が必要となることが知られています。また約半数の人は顔面神経麻痺、複視、嚥下障害といった脳神経障害を生じます。

(5)×:腸管出血性大腸菌は、100℃ 3分間の煮沸では殺菌できる。
腸管出血性大腸菌(O-157)は熱に弱く、75℃1分間以上の加熱で死滅します。
そのため、『大量調理施設衛生管理マニュアル』においても、加熱調理食品における加熱温度は、中心部が75℃1分間以上まで加熱されていることとされています。

“75℃1分間の加熱”は、人体・食べ物・給食で出題される非常に重要な数字なので、必ず暗記しましょう。

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